第1話「突然の吐き気と、小さな命」
■Scene:撮影スタジオの異変
都内の撮影スタジオ。
玲奈は、主演を務める社会派映画のワンシーンを収録していた。
その役柄は重いテーマを背負っていたが、玲奈は役に入り込み、自然な演技を続けていた。
だが――
照明がまぶしく照らされるセットの中、玲奈の顔が一瞬、青ざめる。
玲奈:「……すみません、ちょっと、お手洗いに」
現場のスタッフが驚く間もなく、玲奈は口元を抑えて控室へ。
その後を追うように、マネージャーの千田が駆けつけた。
千田:「玲奈さん、大丈夫ですか……? 顔色、真っ青ですよ」
玲奈:「……なんか、急に気持ち悪くなって……でも、風邪じゃない。なんとなく、わかるの……」
千田:「まさか……」
玲奈はゆっくり頷いた。
玲奈:「……もしかしたら、妊娠……してるかも」
⸻
■Scene:母との電話、仏壇の前
その日の夜、自宅のリビングで。
玲奈は母に電話をかけていた。
玲奈:「……うん、つわりみたいな症状があって。今、少し不安で……」
電話越しの母は、優しい声で答えた。
母:「それなら、昔私が通ってた産婦人科がいいわ。先生、今でも現役でいらっしゃるはずよ。何かあったらすぐ動いてくれるから」
玲奈:「ありがとう。……ねぇ、お父さんにも報告、しておこうかな」
そう言って、玲奈は電話を切った後、和室へ。
そこには、写真立てに微笑む父の遺影。
玲奈:「……ねぇ、私、お母さんになるかもしれないよ。パパ、見守っててね」
そっと線香を立て、両手を合わせる玲奈。
その指には、誰にも見せたことのない結婚指輪が光っていた。
⸻
■Scene:現場に戻っての報告
翌日、玲奈は再びスタジオに姿を現す。
だが、カメラの前に立つ前に、休憩中の楽屋でスマートフォンを取り出し、
指先で“特別な相手”に電話をかけた。
玲奈:「……悠人さん?今、大丈夫?」
(電話の向こうから優しい声)
悠人:「玲奈さん……?どうしたの?撮影、今……」
玲奈:「ううん、大事な話があるの。……実はね――」
彼女の声が震える。
玲奈:「……赤ちゃん、できたの。私たち、もう“家族”だったけど、本当の意味で……」
沈黙。
そして、電話越しに聞こえたのは、
息を詰めたような喜びの笑い声だった。
悠人:「……ありがとう、玲奈さん。俺、本当に……泣きそうだ」
玲奈の目に、そっと涙がにじむ。
その瞬間から――
ふたりの“秘密の夫婦生活”は、“家族”というもう一歩先へと進んだのだった。
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