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第9話「公開初日と、それぞれの誓い」



あの日、言えなかった台詞があった。

あの日、受け取れなかった勇気があった。

今、すべてを懸けて、“スクリーンの向こう”で語りかける。



■Scene:幕が上がる、主演女優・佐伯心音


都内・大型シネコン。朝一番の試写会場。


本日公開の新作映画『空のない家』――主演・佐伯心音。


会場の最前列中央には、制作スタッフ陣が静かに並んでいた。


そして――

その少し後方、視線の先にただ一点を見据える女性の姿があった。


玲奈。


帽子もマスクもしていない。

ただ堂々と、今は“観客”としてその場に立っている。


玲奈(心の声):「心音……あの役を、あなたはどう生きるの?」


上映が始まる。


スクリーンの中、心音は――もう“佐伯心音”ではなかった。

彼女は“父を失い、母を信じられなかった少女”になりきっていた。



■Scene:舞台挨拶、覚悟の言葉


上映後、客席から大きな拍手が湧き起こる。


心音が、まっすぐ舞台上へと歩み出た。


照明がまぶしいほどに彼女を照らす。


心音:「……この作品で私は、“自分の心にウソをつかない”ということを学びました」


一瞬、息を飲むように観客が静まる。


心音:「本当は怖くて、苦しくて、泣き出したくなることばかりでした。

でも……それでも“逃げない”と決めたんです。

誰かが届けてくれる言葉を、私の声で返すために」


そして、カメラに向かって小さく微笑む。


心音:「“あの台詞”を、今……ここで、言わせてください」


そして、静かに――彼女は言った。


「どうして、そんなに優しくするの……?

壊れそうな私を、そんなに簡単に許さないでよ。

……それじゃ、もう“嫌いになれない”じゃない」


客席の玲奈は、指先でそっと口元を覆った。


その台詞は、かつて自分が「演じたくなかった」と拒んだ言葉だった。


今、それを――


心音は、どこまでもまっすぐに語った。



■Scene:客席の少女たち


会場の後方、3人の制服姿の少女がひっそりと座っていた。


澪:「……すごい。あれ、全部ひとりで……あの台詞、こんな風になるんだね」


紗良:「正直……泣きそうになった。

玲奈さんが断った脚本って聞いてたから、ちょっと怖かったけど……心音ちゃん、完璧だったよね」


優菜:「ねぇ……なんか、あれ見てたら“自分も何か、頑張りたい”って思っちゃった」


澪:「私も。玲奈姉にはなれない。でも……心音ちゃんみたいになら、なれるかも」


三人は互いに微笑み合いながら、拍手に加わった。


誰にも気づかれない場所から――けれど、確かにその想いはスクリーンに届いていた。



■Scene:控室での再会、ふたりの女優


舞台挨拶が終わり、裏手の控室。


玲奈がそっとドアを開けると、そこに心音がいた。


心音:「……見てくれてたんですね」


玲奈:「ええ。立派だったわ」


心音:「“あの台詞”、どうでしたか?」


玲奈は少し黙ってから、ゆっくりと頷いた。


玲奈:「……あれは、もう“私の台詞”じゃなかった。

完全に、“佐伯心音”のものでした」


心音の目に、涙が浮かぶ。


玲奈:「ありがとう。あの言葉を、あなたが完成させてくれて」


心音:「……玲奈さんに、そう言ってもらえたら、もう何も怖くないです」


ふたりは、そっと手を取り合った。


女優として、先輩と後輩として――

そして、ひとつの物語を“渡した者”と“受け取った者”として。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


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