第8話「心音、主演決定。そして玲奈との対話」
若さと覚悟、経験と誇り。
二人の女優が一つの脚本をめぐって向き合った夜。
――それは、演じる者同士にしか交わせない言葉だった。
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■Scene:高校の休憩時間、三人の本音
その日の昼休み、都内の私立高校。
澪・紗良・優菜の三人は、中庭のベンチで久しぶりに揃っていた。
紗良:「……聞いた? 心音ちゃんのこと」
優菜:「うん。主演、決まったんだよね。あの……“幻の脚本”って呼ばれてたやつ」
澪:「あれって……玲奈姉が断った脚本だったんでしょ?」
優菜が頷きながら言う。
優菜:「うん。昔のインタビューで“タイミングが合わなかった”って答えてたやつ。でもね、実はその時、心音ちゃん……オーディションに来てたんだって」
紗良:「うわ……それって、ある意味“女優のリレー”じゃん……」
澪:「……なんだか、複雑だね」
その瞬間、三人の間に小さな沈黙が流れた。
(あの心音が、玲奈の背中を追い越すときが来たのかもしれない)
三人とも、はっきりとは言わないが、心のどこかでその現実を感じていた。
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■Scene:それぞれへの報告――“個別の感謝”
数日前――
心音は決意した。
「この主演の話は、みんなに“きちんと伝えたい”。
グループチャットじゃなくて、“一人ひとり”に、直接」
光兄ちゃんには、自宅のリビングで――
「私、主演、決まったの。玲奈さんが昔断ったっていう脚本で。でも、逃げずにやりたい」
澪には放課後の帰り道で――
「お姉さんの背中、近づけるかな……そんな気持ちで受けたの。迷惑だったら、ごめんね」
紗良にはカフェで、優菜にはバス停のベンチで――
彼女は一人ずつに言葉を紡ぎながら、伝えていった。
「私、ここからが本当の勝負だと思ってる」
「だからこそ、あなたにだけは……ちゃんと伝えたかったの」
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■Scene:玲奈のもとを訪ねて
夜。
心音はひとりで玲奈の自宅を訪ねた。
玲奈:「……あら、心音ちゃん」
ソファのテーブルには、二人分の紅茶が並ぶ。
しばらくの沈黙のあと、心音が先に口を開いた。
心音:「……あの脚本、玲奈さんが断った作品なんですよね」
玲奈:「ええ。何年か前に、企画段階で話が来たわ。正直、私には“覚悟”が足りなかった。あの時は」
心音:「……だから、私が演じることに、少しでも“疑問”があるなら、はっきり言ってください」
玲奈はカップを置き、真っ直ぐに彼女を見つめる。
玲奈:「心音ちゃん。あなたがこの役を選んだのは、“憧れ”じゃないわよね?」
心音:「……はい。“憧れ”だけじゃ、とても立てない。
ただ、玲奈さんの背中が、ずっとそこにあったから……私は、あの役に自分を重ねたかった」
玲奈:「……そう」
心音:「私は、玲奈さんのようにはなれない。だけど、“あの台詞”だけは、私の声で届けたかった」
玲奈は少し笑って、立ち上がる。
玲奈:「なら、私の“覚悟”も見せてあげる」
心音:「……え?」
玲奈は心音の前まで歩き、小さく息をついた。
玲奈:「あなたが、あの台詞をどう届けるか――
“元・主役候補”としてじゃなく、“同じ女優”として、観に行く。
だから、私を超えて。全力で」
心音の瞳に、一瞬だけ涙がにじんだ。
心音:「……絶対に、超えてみせます。玲奈さんを」
玲奈は微笑んで、そっと言った。
玲奈:「……楽しみにしてるわ、“主演女優・佐伯心音”」
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