第6話「三人で映画館へ」
スクリーンの向こうで、恋をする。
スクリーンのこちらで、胸が苦しくなる。
――それでも、信じたい。私だけが知ってる“本物”を。
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■Scene:一般客に混ざって映画鑑賞
土曜の午後。
玲奈の新作映画が公開され、心音、悠人、玲奈の三人は人目を避けて都内の映画館に足を運んでいた。
変装した帽子とマスク姿で並ぶ三人。
座席は後方、通路側に縦並び。玲奈を挟んで、左に悠人、右に心音。
スクリーンが明るくなり、上映開始。
物語が進むにつれて、あるシーン――
玲奈演じるヒロインが、イケメン俳優と抱き合い、深くキスをする場面に差しかかる。
スクリーンの中では照明が柔らかく落ち、音楽が流れる。
だが――
その瞬間、隣の心音が小さな声でつぶやいた。
心音:「……妬いてるでしょ?」
悠人:「……」
何も返せなかった。
言葉にすれば、感情が溢れてしまいそうだった。
(本当は、誰にも“玲奈のキス”なんて奪われてほしくなかった)
そんな視線に気づいたのか、玲奈がほんの一瞬だけ、
スクリーンのキスが終わった直後、マスク越しに小さく呟いた。
玲奈:「……夜に、たっぷりキスさせてあげるから」
悠人の耳元に届いたその声は、観客のどんな音よりも甘く、心に響いた。
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■Scene:上映終了後、騒がしさの中で
映画が終わり、照明が点灯。
観客が立ち上がる中、数人の大学生グループが彼らの列の近くにいた。
男子A:「え、今の綾川玲奈じゃない?」
男子B:「マジかよ、隣に居たんじゃね……?」
男子C:「ちょっと写真……いいっすか?」
そう声をかけようとした瞬間、心音が一歩前に出た。
心音:「申し訳ありません。写真撮影はご遠慮いただけますか?」
その声に、男子たちが驚く。
男子D:「あれ? もしかして佐伯心音じゃね……?」
心音:「私たちは今日は、ただのお客さんとして来ています。
どうか、静かに見送ってください」
男子たちはしばらく黙り込み――やがて小さく頷いた。
玲奈は、背中越しに心音の袖をつまんで小さく囁いた。
玲奈:「……ありがとう、心音ちゃん」
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■Scene:夜、寝室にて――静かな愛の確認
その夜。
玲奈と悠人はダイニングもそこそこに、寝室へと向かっていた。
ベッドの上。
悠人は言葉を発せずに座っていた。
玲奈:「……ねぇ、何も言わないの?」
悠人:「……」
玲奈はそっと彼の唇に、自分の唇を重ねる。
「あれは“演技”だよ。
本物のキスは、悠人にしかしない。……ね?」
その言葉と同時に、濃く、深く――
時間を忘れるような、甘いキスが始まった。
衣擦れの音すらかき消すほどの静けさの中、
玲奈の唇と唇が、30分近くも優しく交わり続けた。
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■Scene:風呂場にて、一日の終わり
その後、ふたりはゆっくりと浴室へ。
湯船の中、玲奈が悠人の髪に泡を立てながら言う。
玲奈:「……こうしてると、なんだか普通の夫婦みたいだね」
悠人:「普通じゃないけど、いちばん幸せな“秘密の夫婦”だよ」
玲奈:「うん……」
お互いの髪を洗い合い、肩を流し合い、
最後にはふたりで湯に肩まで浸かって、額を寄せるように――
静かにキスを交わした。
まるで、スクリーンの中よりもずっと確かに、
ふたりだけの“現実”を愛おしむように。
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