第4話「すれ違いと嫉妬の種」
疑うつもりはない。
でも、見えない時間に心がざわつく――
“信じたい”という気持ちさえ、試される日がある。
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■Scene:撮影現場、寄り添う手のひら
クライマックスのシーン撮影。
感情が激しくぶつかる場面で、柚季は震える手を悠人の方へ差し出した。
演出確認のため、彼女の手を添える悠人。
ほんの数秒だが、その瞬間を――
玲奈は、スタジオ隅のモニター越しに見てしまった。
(……あの距離感、私にはもう見せてくれないの?)
玲奈の中で、ほんの小さな棘が生まれた。
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■Scene:その夜の静かな食卓
帰宅後のキッチン。
玲奈は無言で箸を動かし、悠人もそれに気づきながらも言葉を選べずにいた。
玲奈:「……柚季ちゃんとは、仲がいいのね」
悠人:「……ん? 別に、仲がいいとかじゃなくて、仕事上の話だよ」
玲奈:「そう。現場って、そういうことがあるのね。私も昔、よく“誤解”された」
悠人は一度箸を置いた。
そして静かに玲奈の目を見つめる。
悠人:「玲奈さん。俺は――誤解されても、誤魔化すつもりはないよ」
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■Scene:リビングの灯り、強く抱きしめて
食後。
玲奈がソファに腰を下ろしていたとき、
悠人が立ったまま、鋭く真っ直ぐに言った。
「柚季とは、何もないよ。
演出のために触れた手で、何かが生まれることはない。
――俺が欲しいのは、玲奈さん、あなただけだよ」
玲奈が口を開こうとした瞬間。
悠人は身をかがめ、玲奈の唇に、重くて熱いキスを落とした。
椅子の背もたれに押されるように、玲奈の身体がソファに倒れ込む。
唇が離れたあと、彼はそっと耳元で囁いた。
「信じて。
俺は“監督”でも“先生”でもない、
あなたの“夫”なんだから」
玲奈は少し頬を赤らめながら、黙って小さく頷いた。
その手は、ソファの布をきゅっと掴んでいた。
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■Scene:柚季のひとりきりの夜
一方その頃――柚季は、自宅の小さなアパートで独り、脚本を見つめていた。
ふと、スマホを開いて悠人のSNSを探すが、もちろん私生活の投稿など一切ない。
「……監督って、誰にも見せない目を持ってる」
柚季はぽつりと呟いた。
その目は、ほんの少しだけ、寂しそうだった。
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