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第2話「君がいない現場で」



ふたりの距離が、すこしずつ開いていく。

それは、愛が薄れたわけじゃない。――夢が、膨らんだからこそ。



■Scene:映画の現場、曇り空のロケ地


朝7時、廃ビルの一角でクレーンが組まれ、照明スタッフが無言で動く。


悠人は監督台本を抱え、主演・柚季に話しかけていた。


「……あのラストカット、もう一段深くいける。

“見捨てられた子”じゃなく、“それでも生きた子”として立ってみてくれる?」


柚季:「……はい」


周囲が沈黙するほど、真剣な空気。


ADが「カメラ回りました!」と叫ぶと、悠人の声が現場に響いた。


「……よーい、スタート!」


その声に玲奈の名はない。

彼女の姿は、そこにはいない。



■Scene:玲奈、収録スタジオ


都内某テレビ局の控室。


玲奈はトークバラエティのゲストとして呼ばれていた。

司会者が、あるコーナーでこう尋ねる。


「綾川玲奈さんは恋愛について、どんな考えをお持ちなんですか?

あまり熱愛報道って……ないですよね?」


スタジオがざわつく。


玲奈は一瞬だけフッと笑った。


「そうですね……秘密にしてるんじゃなくて、

見せる必要がないと思ってるだけ、です」


会場からは拍手。

だがその裏に、「あなたにだけ見せたい愛がある」という本音を隠した。



■Scene:帰宅、冷えた食卓


その夜、玲奈が帰宅すると、ダイニングには食器だけが並んでいた。


キッチンの鍋には、悠人が夕方に作った味噌汁。

ラップ越しに湯気はもう出ていなかった。


玲奈はそっとスプーンを握りしめた。


(悠人くん……今日も遅いんだ)


冷えた味噌汁を口に運びながら、

ふたりの夢が、今すこしだけ“すれ違っている”ことに気づく。



■Scene:深夜、風呂あがりの寝室


0時過ぎ、悠人がそっとドアを開けると、玲奈はベッドの上で脚を抱え、本を読んでいた。


悠人:「……起きてたんだ」


玲奈:「うん。おかえり。撮影は?」


悠人:「順調。柚季ちゃん、ほんとすごい。……今日は3テイクでOK出たよ」


玲奈は笑って頷きながらも、目はほんの少しだけ寂しそうだった。


悠人は玲奈のそばに腰を下ろし、そっと手を握った。


「玲奈さん……俺、ちゃんと見てるから。

ちゃんと、いつもあなたを見てるよ」


玲奈:「……私も。あなたが遠くに行っても、見てるから」


ふたりは何も言わず、そっとキスを交わす。


それは熱くもなく、激しくもない、

ただ静かに、ふたりの“いま”を確かめるようなキスだった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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