特別編「もしも、あなたが“ただの一般人”だったら」
「もし玲奈が国民的女優で、私(悠人)がただの一般人だったら」
愛にもしもはない。けれど、想像する“もうひとつの未来”が、今のふたりをもっと深く結びつける。
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■Scene:ある夜、ふたりきりのリビングで
都心から少し離れた静かな住宅街の一軒家。
子どもたちが寝静まり、テレビも消したリビングに、ふたりの声だけが響いていた。
玲奈は脚をソファに乗せ、ガウン姿でワイングラスをくるくると回している。
悠人はその隣、何か考えるように天井を見つめていた。
悠人:「ねぇ、玲奈」
玲奈:「ん?」
悠人:「……ひとつ、聞いてもいい?」
玲奈:「……何?改まって」
悠人:「……もし、俺が“俳優”でも“監督”でもなくて。
ただの……本当に、何の取り柄もない“ただの一般人”だったらさ。
俺が玲奈にプロポーズして、受け入れてくれるのって、どのくらい付き合った後だと思う?」
玲奈はワインを一口飲んでから、ふっと目を細めた。
玲奈:「――あら、それは面白い質問ね」
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■Scene:玲奈の“もしも”の想像
玲奈:「そうね……。まず、私が女優をしてて。あなたが一般人で、私のファンだったとするでしょ?」
悠人:「うん」
玲奈:「最初のきっかけは、ファンレターよね。
それがよほど真剣で、何年も送り続けてくれてたら……気になるかも」
悠人:「お、じゃあ読んでもらえてたってことにしよう」
玲奈:「そこから何かのイベントとかで偶然会って、話して……“なんか気になるな”って思って。
でもやっぱり、芸能人と一般人って距離があるじゃない?」
悠人:「まぁ……うん、それはあるよね」
玲奈:「だから、私が“女優・綾川玲奈”じゃない時間をあなたと過ごせるかどうか――そこが、たぶんポイント」
悠人:「たとえば、どんな時間?」
玲奈:「普通にコンビニ行ったり、一緒に夜の公園歩いたり。
仕事じゃない、台本のない“私”を、ちゃんと好きでいてくれるかどうか」
悠人:「……うん、ずっと好きでいられると思う」
玲奈はにっこりと微笑み、続けた。
玲奈:「そのうえで……そうね、交際3年目。
私が35歳を迎える年、あなたが真剣に指輪を差し出してくれたなら――受け入れてたかもしれない」
悠人:「……3年か。長いようで、短いような」
玲奈:「芸能界で生きてると、日常が嘘みたいに早く過ぎていくのよ。
でもね……“本当の気持ち”って、時間をかけないと信じられないの」
悠人:「じゃあ、俺が3年待って、ずっと同じ想いを持ち続けてたら……?」
玲奈:「……“私を女優じゃなく、玲奈として見てくれるなら”――そう言われたら、きっと、頷いてた」
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■Scene:今のふたりへと還る
玲奈はグラスをテーブルに置き、
隣に座る悠人の肩にそっともたれかかる。
玲奈:「でもね。現実の私は、**“交際0日”**であなたに“はい”って言っちゃった」
悠人:「うん。あれ、いまだに夢なんじゃないかって思うときあるよ」
玲奈:「ふふ。私も」
悠人:「3年付き合ってたら、俺たちどうなってたかな」
玲奈:「……もしかしたら、3年目のその日、同じように“はい”って言ってたかもね。
でも……“好き”って想いに時間は関係ないんだと思う」
悠人:「……玲奈」
玲奈:「なに?」
悠人はゆっくりと顔を寄せ、
彼女の唇に――静かに、けれど確かなキスをした。
「んっ……」
玲奈:「……プロポーズ、何度されても悪くないわね。
私、何回だって“はい”って言ってあげる」
悠人:「……じゃあ、この先も、ずっと俺の奥さんでいてくれる?」
玲奈:「ええ。あなたが“私のファン”であり続ける限り、ね」
ふたりはそのまま、ソファの上で寄り添いながら、
ただ静かに、重なるぬくもりを確かめていた。
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