第8話「玲奈と娘の、初めての舞台」
誰にも気づかれないように。
でも――娘にはちゃんと見える場所で、私はずっと見守っていた。
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■Scene 1:発表会の日
秋晴れの朝。
玲奈は帽子を深く被り、マスクをしてスカーフを巻いていた。
玲奈:「目立ちすぎないように……これで大丈夫かな?」
悠人:「完璧。でも、もし園の誰かにバレたら……」
玲奈:「……“心ちゃんのお母さん”で通す」
ふたりは、心の通う保育園のホールへと足を運んだ。
観客席には他の保護者が集まり、賑やかな雰囲気。
玲奈は静かに最後列の端に座った。
娘・心が、小さな主役として立つ発表会が、まもなく始まろうとしていた。
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■Scene 2:バレそうになった“あの顔”
園内スタッフの中で、ひとり――その存在に気づいた者がいた。
保育園の園長・高橋は舞台裏から玲奈の顔を確認し、目を丸くした。
園長:「……あの方、まさか……」
幕間に、玲奈のもとへそっと近づいてくる園長。
園長:「あの……神谷玲奈さん、ですよね?」
玲奈:「……すみません……園の方には、どうか内密に」
園長:「もちろんです。お子さんに影響が出るようなことは避けたい。
ただ……今日の心ちゃんの頑張り、ぜひしっかり見てあげてください。
お母さんがいることで、きっと勇気になると思います」
玲奈:「……ありがとうございます。
あの子がどんな役でも、一生懸命やっているのを見られたら、それだけで十分です」
園長:「あ、それと……結婚してらっしゃることも、私からは一切口外しません。
娘さん、素直で元気な子に育っています。ご家庭での愛情、ちゃんと伝わってますよ」
玲奈はその言葉に、思わず涙がにじんだ。
玲奈:「……うれしいです。本当に、ありがとうございます」
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■Scene 3:小さな舞台の大きな一歩
発表会が始まった。
心の役は――「ちいさな光の精」
セリフは短いが、舞台の真ん中で笑顔を見せる姿に、玲奈は胸を震わせた。
玲奈:(……私も、こんなふうにステージに立ったことがあった。
心が、今ここに立っているのが不思議)
演技の途中、心は観客席を見回し、ふと――最後列の玲奈を見つけた。
その瞬間、小さな笑顔がふわっと咲いた。
玲奈:(……あ。気づいたのね)
そしてその後のセリフ――
「わたし、ひとりじゃない。いつも、見ててくれるから!」
玲奈は、涙をこらえるので精一杯だった。
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■Scene 4:舞台が終わって
発表会終了後、保護者との混雑を避けて帰ろうとした玲奈に、また園長がそっと近づく。
園長:「……素晴らしかったですね。
娘さんがあんなふうに、感情を乗せてセリフを言えたのは――きっと、お母さんの姿が見えたからだと思います」
玲奈:「……“見守る”って、難しいですね。
何もしていないようで、実はちゃんと伝わってる。今日は、心に教えられました」
園長:「ご両親の存在は、子どもにとって、いちばんの“舞台照明”ですから」
玲奈:「……綺麗な言葉。ありがとうございます」
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