表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/72

第4話「“好き”を言ってはいけない」



――名前を与えた瞬間、それは“許されない感情”になる。



■Scene 1:感情に名前をつけたら


撮影スタジオに響く静寂。

綾川玲奈は本番直前、衣装合わせの鏡に映る自分を見つめていた。


(私、今――“恋”してる?)


昨日、悠人が放ったあの言葉。


「きっと、もっと簡単に“好き”って言ってました」


その真っ直ぐさが、玲奈の胸を焼いて離れない。

けれど、口に出してしまえば、それは終わる。

“女優”という立場は、誰かを公然と好きになる自由すら奪う。


そこへマネージャーの千田が現れる。


「玲奈さん、最近ちょっと柔らかくなった気がします。何かあったんですか?」


「……ううん、何も」


玲奈は微笑んで、いつもの“女優の顔”に戻った。

心にしまったままの“好き”を、隠す術はもう覚えているから。



■Scene 2:最後のホームルーム


一方、都内の高校――神谷悠人は、卒業式を目前に控えた教室にいた。


「神谷〜、最近ちょっと浮かれてんじゃねーか?」

「彼女できたんじゃね?」

「もしかして、推しと結婚できたらって妄想してんだろ〜?」


クラスメイトたちの茶化しが飛ぶ。

悠人は笑って受け流すが、その胸の奥にあるのは“妄想”ではない、現実の重みだった。


彼は知っている。

玲奈が誰よりも人目を気にしなければいけない職業であり、

自分が“高校生”という時点で、すべてがアウトだということも。


「好き」と言えば、すべてが壊れる。

でも、「好き」と言わなければ、彼女はきっと遠ざかる。


その狭間で、悠人は今、人生で初めて**“覚悟”**という言葉と向き合っていた。



■Scene 3:ふたりのLINE


夜。玲奈の部屋。


LINE通知が鳴る。

悠人からだった。


【今日はありがとうございました。すごく勉強になりました】

【でも、ちょっとだけ――寂しくなりました】


玲奈はしばらく指を止めてから、返信する。


【どうして?】


数秒後、悠人からの返信。


【だって、僕にとっては“本番”みたいな時間だったから】

【玲奈さんは……どうでしたか?】


玲奈の手が止まる。

スマホの画面に映る文字が、静かに胸に刺さる。


「……バカね、ほんとに」


呟きながら、玲奈は震える指でメッセージを打ち込む。


【私は……“リハーサル”だったと思ってる】

【だから、もう少しだけ待ってて】



■Scene 4:言葉にならない約束


その言葉の意味を、悠人は一晩中考えていた。

“リハーサル”――それはつまり、“本番”があるという希望だろうか。

それとも、もう二度とないという意味なのか。


そして夜明け前、悠人はスマホに一行だけ返す。


【はい。僕、待ちます。あなたが“本番”だと思える日まで。】


玲奈はそのメッセージを、毛布にくるまりながら読み、涙ぐんだ。


「ほんとに……年下なのかな、この子……」


年齢、立場、世界の常識。

すべてを引き裂くには、まだ時が足りない。


でも、どれだけ遠回りしてもいい。

この気持ちだけは、きっと“演技”じゃない。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ