第8話「初日舞台挨拶、“恋”を語る女優」
言葉にはしない。でも、確かに伝わる。
愛してる人が、あの客席の中にいることを――私は、知っている。
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■Scene 1:映画初日、満席の劇場にて
週末。
ついに、映画『ひかりの声』が全国公開となった。
都内の大手シネコンでは初日舞台挨拶が開催され、
登壇者には主演の綾川玲奈、共演の水島和輝、そして監督・神谷悠人の名前も。
だが、悠人はあえて舞台上には上がらず、観客席の中にひとり混ざっていた。
関係者としてではなく、ただの“いち映画ファン”として、
玲奈の言葉を、彼女の声を、真正面から受け止めるために。
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■Scene 2:マスコミの質問、「恋をしている時、演技は変わる?」
司会者が軽く質問を投げかける。
「玲奈さん、この映画ではとても繊細でリアルな恋の感情が描かれていました。
ご自身の中で、恋をしている時って、演技に変化はあると思いますか?」
観客席が一瞬ざわめいた。
玲奈は一拍置き、ふっと笑みを浮かべて答えた。
「恋をしているときの女性って、どこか“瞳が強くなる”と思うんです。
自信とか、迷いとか、全部抱えた上で――
それでも“誰か”に真っ直ぐに想いを届けたいって、そんな気持ちになるから」
悠人の手が、膝の上でゆっくりと握られた。
(“誰か”って、それは……僕にしか分からない。
玲奈さんの今の演技の奥にあるのは、僕への気持ちだ)
玲奈の言葉に、会場は温かな拍手に包まれた。
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■Scene 3:舞台袖、すれ違いの視線
舞台挨拶終了後、玲奈が舞台袖を歩いていると、
すれ違いざま、ふと視線を上げた――そこに、悠人の姿。
けれど、スタッフや報道陣が多く、声はかけられない。
ただ、二人の視線だけが一瞬だけ交錯する。
玲奈は口元だけでそっと呟く。
「――届いた?」
悠人はそれに、うなずいて、
右手で小さくハートの形を作った。
誰にも気づかれず、誰にも届かない。
でも、**ふたりだけの“答え合わせ”**だった。
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