第3話「キスの角度と、演技の温度」
“感情”を演じるのではなく、“愛”を信じる。
それが、ふたりの答え。
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■Scene 1:本番、キスシーン直前の緊張
都内の撮影スタジオ。
今日の撮影は、主人公(玲奈)と青年(和輝)が互いの過去を知り、
静かに心を重ねる“ラスト直前”のキスシーンだった。
カメラが据えられ、照明がセットされる。
現場には緊張が走る。監督席の悠人は、ヘッドフォン越しに深く息を吸った。
「位置、よし。光、少しだけトーン落として……カット22、スタンバイ」
玲奈と和輝が立ち位置につく。
「よーい……アクション!」
和輝がゆっくりと玲奈に近づき、目を合わせる。
玲奈が言葉を飲み込み、視線を落とし――そのまま、ふたりの唇が触れる直前……
「カット!」
悠人の声が響く。
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■Scene 2:繰り返すリテイクと、“演技”の狭間
「……すみません。少し、角度が合ってなくて。
玲奈さん、もう少し顎を引いてもらっていいですか? 和輝くん、半歩前へ」
2度、3度とリテイクが繰り返される。
そのたびに悠人は細かく指示を出すが、表情には少しずつ“迷い”が滲んでいた。
(玲奈さんに、他の男とキスさせてるのは……演出。でも……)
撮影の合間、玲奈がそっと悠人の元へ歩み寄った。
「ねえ、悠人。もしかして――演出、迷ってる?」
悠人は目を伏せたまま答える。
「……ちょっとだけ。演出家としては妥協できないけど、
夫としては、正直……複雑で」
玲奈はその言葉に、静かに微笑んだ。
「じゃあ、最後の1回だけは“女優”じゃなくて、“妻”として撮らせて。
私、あんたの映画でしか“本当の気持ち”をキスに込めたことないから」
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■Scene 3:“愛してる”はセリフじゃない
撮影再開。カメラの向こうで、玲奈が目を閉じた。
和輝がそっと唇を近づけ――
触れる、わずかな瞬間。
その一瞬に、玲奈の“芝居”ではない、**ひとりの女の“決意”**がこもっていた。
(このキスに、“悠人への愛”を込める。
たとえ観客が誰も気づかなくても――彼だけは、絶対に分かってくれる)
「……カット、OK!」
悠人の声が少しだけ震えていた。
スタッフから拍手が起きるなか、玲奈は静かにモニターを見つめる悠人の元へ。
「ねえ、悠人。今のキス……どうだった?」
「……完璧だった。
でも僕には、分かったよ。玲奈さんの中には、僕がいたって」
玲奈は少しだけ涙を浮かべ、ふっと笑った。
「当たり前じゃない。
私、“あんたのために演じてる女優”なんだから」
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