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第2話「カメラが回る、その瞬間まで」



“本番”が始まる前に、一番揺れていたのは、心だった。



■Scene 1:台本読み合わせ、衝撃の一文


クランクインの1週間前。

都内のスタジオで、キャスト・スタッフ全員が集まり台本読み合わせが行われた。


主演女優・綾川玲奈、

そして相手役に選ばれたのは、若手注目俳優・水島和輝(23歳)。


読み合わせの途中、あるシーンで場が一瞬凍る。


「(玲奈演じる女性が、和輝演じる青年にそっとキスをする)」


悠人の手が、わずかに止まった。


玲奈は台本から目を上げ、悠人と目が合う。

そして、プロとして静かに頷く。


(……そうだよな。これは“演出”なんだ。嫉妬してる場合じゃない)


自分に言い聞かせるように、悠人は小さく息をついた。



■Scene 2:帰宅後の沈黙


その夜。


自宅に帰ったふたりは、ソファで静かに座っていた。

食事の後片付けも終わり、テレビもつけず、ただ互いの気配だけを感じる時間。


玲奈が先に口を開いた。


「……キスシーン、嫌だった?」


悠人は驚いたように首を振る。


「違う。嫌じゃない。

ただ……“自分が脚本に書いた”ってわかってるのに、

いざ玲奈さんが他の人とキスする想像をしたら、

胸が締め付けられた」


玲奈は小さく笑う。


「……可愛いな、悠人くん。

でも安心して。“演技”で心は動かさない。

あんたのために“生きる”役だから、これは」


悠人は玲奈の隣ににじり寄り、

そっと彼女の頬に手を添えた。


「……我慢、できないや」



■Scene 3:夜のキス、心のリセット


そう言うと――

悠人は玲奈の唇に、ゆっくりとキスを重ねた。


最初は触れるだけの優しいキス。

けれど、次第に深く、切実に、

彼女の温もりを確かめるように唇を重ねていく。


玲奈も目を閉じ、静かに身を委ねる。


「……嫉妬してる悠人くん、好き。

あんたのそういうところ、守られてる感じがして」


キスの合間、玲奈の吐息が耳にかかる。


「だから今夜は、私のこと、誰よりも強く抱きしめて」


悠人は玲奈の身体を抱き寄せ、ソファの上でそっと横になる。

裸にはならずとも、心と心が裸になるような、深く長いキス。


――誰にも見せない、でも誰よりも確かな愛を交わす夜だった。



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