第8話「スクリーンの中の告白」
――ラストに流れた“あの声”は、誰にも真似できない愛の証。
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■Scene 1:完成、そして上映会前夜
悠人の短編映画『朝が咲くころ』は、全編集が完了した。
玲奈のナレーション録音は秘密裏にスタジオで行われた。スタッフや講師にも正体は伏せられ、「声優の協力」としてクレジットされることに。
その夜、悠人は玲奈とふたりで小さな祝杯をあげていた。
玲奈は、グラスを持ったまま、少しだけ不安そうに聞く。
「……本当に、いいの? このまま“声だけ”の出演で」
悠人は頷いた。
「うん。姿が見えなくても、玲奈さんの声は……
ちゃんと“映画の魂”になってる」
玲奈の頬がゆるむ。
「じゃあ、明日の上映会――
あんたのスクリーンの中で、私は“あなたの想い”を語るね」
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■Scene 2:上映会、満席の会場
翌日、学校の大ホール。
悠人たちのクラスによる自主制作映画の上映会が始まった。
保護者や関係者、学生、教師などが集まり、会場は満席。
最後に上映されるのが、悠人のチームによる『朝が咲くころ』だった。
講師が紹介する。
「演出:神谷悠人。テーマは“目に見えないもの”。
一見シンプルなドラマだが、構図と音、そして“声”の演出に注目してほしい」
上映が始まり、スクリーンには――
静かな朝の光の中、ひとり暮らしの女性(ひかり演)が、小さな花を受け取る日々が描かれる。
誰が届けているのかは分からない。
でも彼女は、毎朝、その花に話しかけるように笑い、泣き、時に怒る。
やがて、彼女の心の“空白”が埋まっていく。
観客たちが静かに引き込まれていく中、ラストシーンが訪れる。
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■Scene 3:ラストの声
画面が静かに暗転し、そして――
玲奈の声が、スクリーンから流れた。
「見えないからこそ、信じられるものがある。
触れられないからこそ、確かめたくなる心がある。
毎朝のあの花は、私にとって“あなた”だった。
あなたがそこにいると、教えてくれる証だった。
愛しています――顔も、名前も、知らなくても。」
観客の誰もが、スクリーンに耳を澄ませた。
澄んだ、深く届く声。優しく、そして強い声。
涙を流す者、目を見開いて聴く者、それぞれの想いでその“声”を受け止めていた。
そしてエンドロール。
キャスト欄の最後に、静かに現れる名前。
「Voice: R.K.」
本名は明かされない。
だが悠人の視線の先には――
観客席の最後列で、帽子を深く被った玲奈が、
小さく、そして確かに笑っていた。
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■Scene 4:終演後の控え室
上映が終わり、関係者が集まる控え室。
講師が悠人の肩をポンと叩く。
「お前、正直に言え。あのナレーション、プロの声優だろ?」
「……はい、“僕にとっての特別な人”です」
「ふん、惚気か。まぁいい映画だった。魂が通ってた」
上映会の騒ぎの裏で、玲奈は密かに退出した。
だが帰宅後――
悠人が玄関を開けると、そこには自宅のソファで待っていた玲奈の姿。
「……おかえり」
「観てくれた?」
「うん。……ちゃんと“伝わった”よ。あなたの気持ちも、声の意味も」
ふたりは抱き合い、
その夜、再び長く静かなキスを交わした。
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