第7話「湯けむりと、あなたの声」
――静寂の湯に溶けていくのは、愛の余韻。
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■Scene 1:ふたりきりの温泉宿
映画の撮影も中盤を迎えた頃。
玲奈と悠人は、週末を利用して郊外の温泉宿へ。
クランクイン前の“打ち合わせ”と称しつつ、実はふたりにとって貴重な夫婦の時間だった。
チェックイン後、部屋に案内されると、玲奈が嬉しそうに窓を開けた。
「うわ、露天風呂ついてる……。悠人くん、夜は一緒に入る?」
悠人は照れ笑いを浮かべながらも、頷いた。
「……玲奈さんが一緒に入ってくれるなら、断る理由ないよ」
玲奈はくすっと笑って、タオルを抱きしめた。
「じゃあ、夕食前に軽く湯に浸かろっか。あんた、最近ちょっと疲れてる顔してる」
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■Scene 2:湯けむりの中、重なる声
湯けむりに包まれた露天風呂。
岩造りの湯船に並んで肩を沈めるふたり。
玲奈は湯の温もりに頬を染めながら、ぽつりと呟いた。
「ねぇ、悠人くん。あの映画、完成したらどうなるのかな」
「ん?」
「私たち、夫婦ってバレるかもって。少し怖くなるの」
悠人は真剣な目で彼女を見た。
「玲奈さんが出演してくれるなら、それが誰かに気づかれてもいい。
それより――“あの映画を完成させたい”って気持ちの方がずっと強い」
玲奈の目が潤み、そして笑う。
「……ほんとに、頼もしくなったね。私が惚れた高校生、もういないみたい」
「いや、玲奈さんに惚れてるのは、あの頃と変わってない」
玲奈はふっと笑い、湯の中で手を重ねた。
「じゃあ、あんたの“声”聞かせて。今夜だけは、女優じゃなく、妻として」
その言葉に応えるように、悠人は玲奈の肩を引き寄せた。
湯の中で唇が重なり、心の奥まで溶けていく。
やがてふたりは、湯の縁に並んで腰を下ろし、
裸のまま、お互いの肌に頬を寄せながらささやき合った。
「玲奈さんの声、ほんと落ち着く……。心臓が緩むっていうか、安心する」
「……あんたの声も、昔と変わった。低くなったし、自信がある。
それが、私にはたまらなく嬉しい」
そのままふたりは、静かに唇と唇、胸と胸、頬と額を重ねていった。
湯けむりの中で、世界はふたりだけのものだった。
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■Scene 3:“声の出演”という秘密
翌日。
帰り際のロビーで、玲奈がそっと囁く。
「ねぇ悠人。今回の映画に、声だけでもいいから“私を使って”くれない?」
「声だけ?」
「うん。ラストのモノローグ。女優としてじゃなくて――
“あなたの妻”として、あなたの作品の中に生きてみたい」
悠人は驚き、そして照れたように頷いた。
「じゃあ……玲奈さんの声、最後に流すよ。
あの花のシーンで、“見えない想い”を語る声……それ、玲奈さん以外、考えられないから」
玲奈の瞳が優しく細められる。
「じゃあ、妻の声、最高の演技してあげる」
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