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第6話「日本アカデミーの夜」



――スクリーンの光が照らしたのは、ただひとりの“妻”。



■Scene 1:スポットライトの先に


都内某所・日本アカデミー賞授賞式。


主演女優賞の候補としてノミネートされた綾川玲奈は、受賞の瞬間を舞台袖で静かに待っていた。


司会の声が会場に響く。


「第47回 日本アカデミー賞 主演女優賞は――

綾川玲奈さん。『残光のドア』での演技により、初の受賞です!」


会場が揺れるような拍手に包まれる。


玲奈はゆっくりとステージへ歩き、トロフィーを受け取ると、マイクの前に立った。


「……ありがとうございます。

私は、ひとりのファンがくれた手紙に支えられて、ここまで来ました。

その人の“まっすぐな眼差し”が、演じることをもう一度信じさせてくれた。

この賞は、私一人のものではありません。

彼に――“あなた”に、心から感謝を込めて」


その“あなた”が誰なのかは誰も知らない。

だが、会場の最前列から静かに拍手を送るひとりの青年だけが、その言葉の意味をすべて理解していた。


神谷悠人。

玲奈の夫。そして、“その手紙”を書いた唯一の存在。



■Scene 2:ご褒美の約束


式が終わり、玲奈は会場の控室にいた。


ノックの音とともに、マスクをつけた悠人が現れる。


「玲奈さん……おめでとうございます」


「ありがとう。見てくれたの?」


「うん。誰よりも綺麗だった」


玲奈はトロフィーをそっと置き、悠人に微笑みかける。


「ねぇ、悠人くん。約束、覚えてる?」


「……え?」


「“何かを達成したらご褒美”って言ってたでしょ?」


玲奈はバッグから鍵を取り出し、小さく囁いた。


「今夜、泊まってるのは……あの別荘。待ってるから」



■Scene 3:裸のまま、重なる夜


夜。別荘の浴室。


湯気の立ちこめる中、悠人は湯船に静かに身を沈めていた。


カランと音がして、玲奈がバスタオルをほどく。


優美な裸身が、柔らかな蒸気のなかに浮かぶ。


「……じっと見ないでよ、恥ずかしいから」


「……だって、綺麗すぎて……」


玲奈が湯に身を沈め、悠人の隣に座る。


しばらく静寂が流れ――

玲奈がそっと彼の頬に手を添える。


「今日だけは、甘えてもいい?」


悠人は、そっとその手に口づけを落とし、応える。


「……僕のすべて、玲奈さんのためにあるから」


玲奈が頷き、ふたりは湯の中で重なる。


裸の肌と肌が、呼吸と鼓動で確かめ合うように触れ合い、

湯気の中で唇が何度も重なった。


肩を抱き、腕を巡らせ、

玲奈の髪が濡れた頬にかかる。


「……好きよ、悠人」


「僕も。玲奈さんが、僕のすべてです」


水音とともに、愛は深く重なっていった。


これは、誰にも言えない“受賞記念の夜”。

誰に見せなくても、ふたりだけの“約束のご褒美”だった。



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