第3話「朝焼けのシナリオ」
――“物語を書く人”と“物語を生きる人”が、同じ朝を見た日。
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■Scene 1:脚本提出の日
都内・映画専門学校。午前10時。
悠人はノートパソコンの画面を睨むように見つめていた。
課題提出締切は午前11時。提出するのは、自身初のオリジナル短編脚本。
タイトル『手紙のない手紙』
― “想いは言葉にならないまま、それでも人生を変える。”
テーマは決めていた。モデルにしたのは、玲奈との出会い。
教室では、脚本志望の佐久間アオイが早々と原稿を提出し、余裕の表情。
「神谷、タイトルいいじゃん。“手紙のない手紙”。泣かせにきたな?」
「……まあね。実話じゃないけど、少しだけ“本当の話”なんだ」
「へえ、好きな人でもモデルにした?」
悠人は苦笑しながら、提出ボタンを押した。
(“好きな人”?……うん、というか……もう妻なんだけどね)
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■Scene 2:撮影現場、思わぬアクシデント
一方、玲奈は都内の撮影所で、連続ドラマ『ミチルとユメの約束』第3話の撮影中。
公園で泣き崩れるシーンを撮り終えた直後、照明スタンドが足元に倒れかけた。
「危ないッ!」
スタッフが叫び、玲奈はとっさに身をひねって回避したが、膝を軽く打った。
すぐに駆け寄ってきた助監督の声。
「綾川さん、大丈夫ですか!? 撮影、いったん止めます!」
玲奈は笑って首を振った。
「大丈夫よ。ちょっと打っただけ。……でも、ごめんなさい、少しだけ休ませて」
彼女の目にはうっすらと痛みと疲労が浮かんでいた。
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■Scene 3:電話越しの“夫”
休憩中の控室。
玲奈は氷のうを膝に当てながら、そっとスマホを取り出して悠人にLINEを送る。
【今日、少しだけ怪我した。大したことないけど、声が聞きたくなった】
数秒後、スマホが鳴った。
「玲奈さん? 怪我したって大丈夫ですか?」
「あんた……声、ちょっと大人っぽくなった?」
「えっ……いや、それどころじゃなくて心配して……!」
玲奈はふっと笑った。
「大丈夫よ。かすり傷。……でも、あんたの声聞いたら、ちょっと楽になった」
沈黙が流れる。
「……今ね、脚本提出したの。玲奈さんとの出会いを元にしたやつ。
“手紙を送った相手と、いつか同じ未来を見る物語”」
玲奈は目を閉じた。
「それ、もう叶ってるわね。現実の方が、ドラマチックかもしれない」
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■Scene 4:朝焼けの中で
翌朝。まだ6時にもならない時間。
玲奈は早朝撮影のために身支度をしていたが、リビングに降りると――
悠人がソファに座って、コーヒーを片手に窓の外を見ていた。
「おはよう……起きてたの?」
「玲奈さんを、見送ろうと思って」
玲奈はその隣に座り、静かに朝焼けを眺めた。
「ねぇ、悠人。私、女優やっててよかったって、最近よく思うの」
「どうして?」
「“誰かの人生を変える芝居”って、そんなに多くない。でも――
たったひとりでも、変えたなら……それって奇跡だと思う」
悠人はコーヒーを置いて、玲奈の手を取った。
「変わったのは、僕です。玲奈さんがいなきゃ、今の僕はいない。
だから、僕の夢のすべては、あなたの奇跡に報いたいだけなんです」
玲奈の瞳が潤む。
「……朝から泣かせないでよ。化粧、崩れるでしょ」
そしてふたりは、手をつないだまま、オレンジ色の空を見上げた。
それはまるで、新しいシナリオの1ページ目のようだった。
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