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第8話「名前を、あなたに」


■Scene:静かな病室、再会の手


玲奈が入院してから数日。ようやく落ち着いたタイミングで、悠人が病室を訪れた。

ドアを開けると、玲奈は薄いガウン姿で窓辺の椅子に腰かけていた。


玲奈:「……来てくれたんだ」


悠人:「当たり前でしょ。俺が来ないと、誰が“お父さん”やるんだよ」


玲奈は微笑み、差し出した手に悠人がそっと触れる。

ふたりの手のひらが重なった瞬間、玲奈の瞳がふっと潤んだ。


玲奈:「ねぇ……お腹の子、会ってくれる?」


悠人:「……ああ、会わせて」



■Scene:エコーの向こうの、ふたりの命


主治医が用意を整え、ベッドに横たわる玲奈の隣に悠人が座る。

エコーの画像がモニターに映し出されると、そこには――


医師:「こちらが、男の子。……そしてこちらが女の子ですね。順調に育っていますよ」


モニターの中、ふたりの命が、かすかに動いている。


玲奈:「……見える?」


悠人は言葉が出せなかった。代わりに、小さくうなずく。

その目には、涙がにじんでいた。


玲奈:「私ね……ずっと考えてたの。名前、もう決めてもいいかなって」


悠人:「……うん」


玲奈:「男の子は――『晴真はるま』。

“晴れやかな真心”って書くの。どんな日でも、まっすぐでいてほしいから」


悠人:「……いい名前だ」


玲奈:「女の子は――『紬希つむぎ』。“つむぐ”って、物語を紡ぐみたいでしょ。

希望を紡いでいけるような、そんな子に育ってほしいの」


悠人:「……俺たちの子に、ぴったりだよ」


モニターの中のふたりの命に向かって、ふたりは手を重ねた。


玲奈:「晴真、紬希――パパとママはね、世界でいちばん君たちを待ってるよ」


悠人:「早く会いたいな。……もう、すぐそこにいるんだよな」



■Scene:静かな夜、夫婦の誓い


その夜、病室の灯りは落とされ、読書灯のやわらかい光の中で、ふたりは並んで眠っていた。


玲奈:「ねぇ……ひとつだけ、わがまま言っていい?」


悠人:「なんでも」


玲奈:「私、いつか晴真と紬希が成長した時に……“ママはお芝居で迷った時、君たちに出会って変われたんだよ”って、言いたいの」


悠人:「言おうよ。そのために、俺もがんばる。監督として、父親として」


玲奈:「ありがとう、悠人。……好き」


悠人は、そっと玲奈の唇にキスを落とした。

ふたりの間にあるのは、言葉じゃなく、確かな“未来”だった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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