第6話「届け、この小さな命に」
■Scene:雑誌インタビュー、揺れる気配と確かな意志
都内の有名出版社が運営する月刊映画誌の取材現場。
玲奈はナチュラルメイクで、シンプルながらも洗練されたワンピースを身に纏い、柔らかく椅子に座っていた。
記者:「では、女優としてのお話から伺わせてください。今後のキャリアについて、どうお考えですか?」
玲奈:「……そうですね。最近は、自分の内面とじっくり向き合うような役にも挑戦したいと思っています。“表現”って、年齢や経験を重ねて、ようやく届く場所がある気がして……」
と、そこで玲奈の表情が一瞬だけ動いた。
――ポコン。
お腹の中から、小さな蹴り。
わずかに眉が下がり、思わず手が腹部に添えられた。
記者:「……あの、大丈夫ですか?」
玲奈:「……大丈夫です。少し、緊張してただけですから」
にっこりと笑って返したが、彼女の瞳にはほんのりと感情が浮かんでいた。
その瞳が語るのは、女優として、そして……まだ誰にも言えない“もう一つの自分”としての覚悟。
玲奈:「“女優”という仕事は、私にとって生き方そのものです。ですが、最近は“守りたいもの”や“伝えたい想い”のかたちが少しずつ変わってきた気がします」
記者:「それは、どんな意味で……?」
玲奈:「たとえば、どんな立場であっても、誰かの力になれる作品。誰かを包み込めるような演技。そんな風に、人の人生に静かに寄り添えるような女優になれたら……素敵だな、って思うんです」
記者はそれを丁寧にメモしながら、彼女の深いまなざしを見つめていた。
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■Scene:マネージャーだけに伝えた“ひとつの命”
休憩時間。
楽屋に戻ってきた玲奈のもとに、千田マネージャーがやって来た。
千田:「玲奈、大丈夫?顔色ちょっと……」
玲奈はそっと笑った。
そして、千田の耳元に小さな声で囁く。
玲奈:「……蹴ったの。中で。赤ちゃん」
千田:「……!」
玲奈:「ふふっ……すごいよね。私のこと、ちゃんと感じてくれてるんだって、思ったら……泣きそうだった」
千田:「……良かった、本当に。撮影のこともあるけど、無理しすぎないようにしてね。玲奈の未来は、女優だけじゃないんだから」
玲奈は頷いた。
だがその笑顔の奥に、「どちらの未来も、私らしく選びたい」という想いが静かに灯っていた。
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■Scene:記者会見後、すれ違いのはじまり
インタビューを終え、雑誌記者との一連の取材は好意的に進んだ。
玲奈は本来のプロ意識を保ちながら、誰にも“真実”を明かすことなく、日常へと戻っていった。
だがその頃、悠人は――
地方ロケ、台本修正、キャストのトラブル調整、深夜の編集。
助手:「監督、仮編集できました。最終チェックを……」
悠人:「ああ、すぐ見る。……ありがとう」
メール画面には玲奈からの“今日の胎動”に関する報告。
だが、既読のまま返信できないまま、時間だけが過ぎていく。
悠人(……早く会いたい。でも、今は……この作品を完成させなきゃ)
彼の心には、確かに“家族”がある。だが、いまは“責任”の方が、その想いを押し込めていた。
⸻
■Scene:夜のメッセージ、“同じ未来”を見て
その夜。玲奈はソファに座って携帯を見つめていた。
既読マークが灯ったままのメッセージ。返事は、ない。
ふと、テレビに流れる悠人の映画の予告が目に入る。
その瞳に、うっすらと涙が浮かぶ。
玲奈(……すれ違ってるって、わかってる。だけど――)
スマホを手に取り、短くメッセージを打つ。
《私たち、きっと同じ未来を見てる。信じてるよ》
そのメッセージも、深夜を越えても未読のままだった。
けれど、玲奈のまなざしは決して曇っていなかった。
お腹をなでながら、やさしく囁く。
玲奈:「大丈夫。パパは、ちゃんと……あなたたちを迎えに来てくれるから」
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