表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/46

内裏の洗礼で瀕死です

(お、主上(おかみ)?って――え、帝……⁈)


「嫌だわ、聞いてらしたんですか?」

「いや?聞いちゃまずい話してた?」

「まさか。主上に聞かれてまずい話なんてありませんわ」

「……」


びっくりしすぎて声が出ない。

笑っていた実雅様を思い出した。


(私ってやっぱりバカなんだ——)


そうだよ。着てる物だって、全然違うじゃん。

私何見てたんだろう……。


「姫、今日も来てくれてありがとう。あなた方の笛や箏、私のところまで聞こえていたよ」

「そ、そう、ですか……」

「?――どうかした?」


掠れた声で返事をすると、主上が不思議そうに声をかけてくださった。

気さくが過ぎる……。



ショックで目の前が真っ暗だ。

不敬罪ってどんな罰を受けるんだろう?島流しとか?


(さよなら、実雅様——)


あまりのことに目が虚ろになる。

顔面蒼白で一言も喋らないのをおかしいと思ったのか、透子様が私を覗き込む。


「……小霧ちゃん、大丈夫?」

「はっ、透子様……私一瞬あの世が見えて」

「もうっ、何言ってるの」


ぼそぼそ二人で話してるのを見て、若草の姫がありがたいほどハキハキと声をかけてくれる。


「あ、姫は主上とお会いするの初めてかしら?」


(わわわわ~~~!やめてやめて、そこつつかないでーっ!)


なにこれ内裏の洗礼?

無垢の呼吸・壱ノ型・純真乱舞……!


小霧、瀕死です……。



彼女はにこにこと言いながら、首をかしげた。


「初めてじゃないですよね?あれ?」

「え? 姫、ひょっとして——」


変わらないキラキラした笑顔のまま、うれしそうに主上がおっしゃった。




しんだ。







「……実雅様っ!!!どうして教えてくれなかったの?!」


やってきた彼を捕まえて詰め寄った。


「~~~っ」


お腹を抱えて笑いをこらえている。

ひどい。笑い事じゃないのに……!


「びっくりして恥ずかしくって、しぬかと思いましたっ」

「ははっ……そりゃ大変だ」

「もうっ!!」


悔しくって、止まらない。


「今日だって、私が女御様と会うって、実雅様ぜったい知ってましたよね?」


そうなんだ。女子会ってどういうことかなって、実雅様には相談してた。


「『行けばわかるんじゃない』とかって、わざと言ってくれなかったでしょう?!」


自分がバカなのを棚に上げて実雅様には申し訳ないけど、どこにも気持ちの持って行きようがない。

さすがにこれくらいの八つ当たり、許してもらえるよね?

だってお家存亡がかかってる案件だよ?


「――!不敬罪で一族郎党、罰を受けたり……?!!」

「あっはっは、そんなこと気にしてたの?」

「気にします!」


気付いたら彼の腕の中にいるんだけど今それどころじゃない。


(まって、私主上にどんな態度だった……?)


初参内から笛レッスンを思い出してぐるぐる悶絶していると、頭の上から優しい声が降ってきた。


「大丈夫だよ」

「でもっ……!」

「うん?」

「……」


穏やかに笑っている彼の目を見た瞬間、すっと気分が冷えた。

ひょっとして――。


「実雅様、ずっと前から知ってました?」

「何を?」

「主上からのお召しだって」

「うん?」

「いつから?」

「いつからかなぁ」


はぐらかすように彼が私の頭に顎を乗せた。


おば、紀伊の君から文が届くよりもずっと前から、お召しがあるって知ってたんじゃないかな。

前に湯殿に文を持ち込んでたのを思い出した。

あの文ってひょっとして……?


彼の胸を押し、じっと顔を覗き込んで聞いてみる。


「なんで黙ってたんですか?」

「言う必要ある?」


お前にもうすぐ帝からのお召しがあるよ、って言う必要——。


「ない……」

「ね」

「でも……」


私がのんきに笛ばっかり吹いてる間、この人は何を考えてくれてたんだろう。


「――ありがとう……」

「こちらこそ」

「?」

「無敵の妻で救われたからね」

「どういうこと?」


(……ひょっとして”帝のお召し”、心配してくれてた?)


もう一度顔を覗き込もうとしたのに、彼がごまかすように腕に力を入れた。

急にぎゅうっと閉じ込められて、何にも見えない。いい匂いしかしない。

自分ばっかり顔隠してずるくない?

彼の袖を掴んでバタバタしていると、実雅様はまた思い出したのか、肩を震わせ笑い出す。


「もうっ!忘れてください!」

「だって……存じ上げない方って……くっくっくっ」


途中からはぜったい面白がって黙ってたよね?

ひどすぎる。


「ぐぅ……」


彼があんまり笑うから悔しくって半泣きになっていると、それを見てまた彼が笑う。

笑いすぎ。





とりあえず島流しは免れるみたい。

私は彼の腕の中でほっと胸をなでおろした。





内裏の事情に巻き込まれてることなんてすっかり忘れて――。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ