「おはようございます」
「おはようございます」
万年寝不足の私だが、今の仕事で遅刻したことはなかった。
やることに飢えている今の私にとって仕事がすべてだからだ。
恋愛をお休みしよう。
人間とかかわる前に自分と関わる。
と決めた私の日常はどこか味気ない。
「…おはよーございます」
口々に返事は返ってきて、スタッフたちは朝礼の準備をする。
今日の予約状況や日課の接客用語が響いた。
「最近、疲れてるね。毎日、バイトなの?」
笹倉さんとスタジオの開店準備をしているとふいに笹倉さんが心配そうに話しかけてきた。
「…毎日ではないですけど…そうですね、週末は本当に疲れます」
金・土はどっちも休めませんから。
と私は何も問題はないように答える。
大丈夫だよ。
いくら疲れたってタイムには迷惑かけないから、安心して。
心の中でそっと、皮肉をつぶやいた。
あ。心が疲れてる
また、不意に頭に言葉が浮かぶ。
この言葉はいつも的確に言葉をよこす。
多分、これは私の心の声。
だって、いつも正しいんだから。
比較的、平日は土日よりも余裕がでる。
予約もそこそこ。
みんな、自分のペースで自分の仕事を片付ける。
そんな中、カメラマンの真田 さくらは怖い顔をして店の入り口をにらんでいた。
「…真田さん、どうしたの?めっちゃ顔、怖いよ」
「だって~…、今日、集荷あるんだよね」
「はっ?」
集荷…って集荷?
宅急便が荷物、取りに来てくれるだけだよね。
「急ぎの荷物があるんですね?」
「いや、むしろいつでもいい荷物だけど」
?な私の頭。
多分、顔に出ていたのだろう
真田さんは私の顔を見ずに小さな声で教えてくれた。
「…いつも来てくれる集荷のお兄さん…実は好き…なんだよね」
「あ~!」
ついつい、納得して大げさにうなづく。
でも、にらんでるのはどうかと思う。
少なくとも私にはそう見えた。
「…えっと、アドレスとか渡さないんですか?」
「とても渡したい!…けど、渡せない」
4歳も年上の25歳の女性が顔を赤くして机に突っ伏す。
なんとも可愛いじゃないか。
つい微笑んでしまう。
なんて可愛らしい人なんだろ。
真田さんはあいかわらず、顔を上げても怖い顔で入り口を睨みつけていた。