追跡2
その頃には私は彼を思って泣くことは減ってきていた。
生活も潤いを取り戻し始め、4ヶ月ぶりに自分の好きな服を買った。
彼の好きな服じゃない。私の好きな服。
一人になってやっと、自由な気持ちになった。
それから、私は自分らしく、を強く考えるようになったよ。
忘れかけていた人との触れ合いを求めるようになった私はキャバクラで出会う男たちとデートに誘うようになった。
友達がほしかった。
寂しさが紛れるくらい、友達を増やしたいと願った。
もし、その中で次の恋ができればもう、さびしくなんかない、と思った。
でもうまくはいかなかったけどね。
どんなに優しい男でも私は惹かれることはなかった。
心の内で私は元彼と比べていたんだと思う。
元彼がどれくらい最悪だったか、は誰も勝てないけれど一つ、一つの仕草、口調
私は元彼の影をひたすら追っていた。
そのことに気づいたら、出会いを繰り返すことを虚しく感じて、再び私は人との関わりを拒むようになった。
キャバクラと家の往復を繰り返す。
寂しくて自分の孤独が辛かった。
親しい人間とはたまに食事に行くことはあったけれど、次第にその連絡も減っていた。
そんな中、先輩の小春さんだけは頻繁に連絡を取っていた。
私を訪れては他愛もない話がひっきりなしに飛び交った。
小春さんには感謝しているよ。
寂しくて仕方のない時には泣きながら電話したりした。
仕事を終えた深夜でも小春さんは電話に出てくれたんだ。
うれしかった。
私にもこんな人がいたんだって、まだまだがんばれるって思えた。
小春さんも実は傷心だったんだけどね。
5年以上、付き合った恋人に別れを告げられてしまった。
それは私が実家に戻ってくるずっと前で、そのとき私は地元にはいなくて、後からやつれた小春さんから話を聞いた。
彼女はわざと明るく詳細を話してくれたけれど、本当は私よりずっと小春さんの方が傷は深かったと思う。
だから私は少しずつ、小春さん自身の話を聞くようになった。
深夜でも仕事でも、小春さんが私を呼んだらできるだけ会いにいくようになった。
それが私なりの彼女への感謝の気持ちだったんだと思う。
ただ、彼女が私にしてくれたように小春さんのそばにいるようにした。
今、思えば私たちはお互いに傷をなめあっていたようだ。
あの時、それが私たちには必要だった。
そうしなきゃ、自分の存在理由を得られなかったんだ。