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第7話 東の森にて

 確かにあいつらは東の森と言っていた。


 だが森のどこにいるかまでは分からなかった。早く見つけなければ二次被害が出かねない。


 森に詳しい人が仲間になれば心強いのだが知り合いはいない。


 手分けなんて無茶なことはしない方がいい。なら今に必要なことは森の中心を目指すことだ。


 とにかく急いで中央に着かないとあいつらはまた人に襲い掛かってしまう。


「森の中心はどこだ?」


「そんなに急がないでよ! ディアス!」


「すまない。これ以上の被害は耐えられない。なんとしても見つけ出したい」


「そうだけど」


 セリカが喋り終え森の奥を目指していると次第に木や茂みがなくなった。開けた場所の中央に木で出来た一軒家が現れた。誰の住まいなのだろうか。


「ちょうどいい。人がいるなら案内してもらいたい」


「確かにあたし達より詳しい人が住んでいそう。どれどれ」


「おいおい待て待て。後方支援が前に出るとは何事だ。人の話を聴け、セリカ」


 本当にこうなったら人の話を聴かない。仕方がないと思い俺も伺うとしよう。


 セリカの分も俺が警戒しなければ隙を突かれてしまう。だがなるべく逃げ道を残しつつセリカの後ろにいた方がよさそうだ。


 はっきり言うと逆手に取れても場所が悪いと戦い辛いしセリカが戦うとは限らない。難しい判断だがここはセリカを信じるしかない。


「人の気配がするよ、ディアス」


「なら伺おう。なるべく静かにな。セリカ」


「分かった。やってみる」


 セリカは扉を二回ほど静かに叩いた。意外に素直な物音だった。


「やはり中に人がいるよ! ディアス!」


「セリカ! 静かに!」


 ここからでは中の音は聞こえない。だがセリカの言葉を信じるなら中に人がいるのだろう。


 だが一軒家から人が出てくる気配はない。ここからでは分からない。ここは近付いて確認を取りたい。


 そう思い俺がセリカに近付くと急に扉が開きセリカは勝手に入り込んでしまった。


「セリカ!」


 思わず声を張り上げ急いで扉の前に立ち止まり開けようとするが開かなかった。


「な!?」


「お前の相手はこの俺様だ!」


 急な声に振り向くとそこには北の魔物が飛んでいた。こいつは負傷していない方の魔物だ。まずいと思い必死に壁沿いを伝い家から離れようとした。


「ほう。逃げるか」


 背中に壁では闘い難いだけだ。だが俺の攻撃範囲ではこいつには届かない。ここは耐えるしかないのか。家から離れ立ち止まり振り向くと隙がないくらいに魔物と距離が近かった。


「それで有利になったつもりか? 俺様達は負けん。北の塔には近寄らせん」


 さっきよりは立ち位置がよくなった。それでも攻撃が届かない。魔法剣を出現させても足かせになるだけでまだ早いだろうに。


「どうした? 武器は持たない主義か? それとも」


「今は必要ないだけだ」


「なに!? 人間の分際で! 差し詰め武器が届かんのだろうが!」


「ご名答だ。だが時間は稼げたよ。お陰様でな」


「なにが!? グヒャ!?」


 セリカは窓から飛び出ておりいつのまにか家の外にいた。魔物の頭上に糸付きの短剣を飛ばし振り下ろしたと同時に柄で頭を叩いていた。やはり俺の読みどおりだ。


 今なら行けると走り出し落ちてきた魔物の近くで立ち止まった。すかさず魔法剣を出現させ柄を握り締め刃先を魔物に向けた。


「直撃だったな」


「ひ!? やめてくれ!? 俺様の負け――」


「それでお前は人を助けたのか。失った代償はあの世で数えるんだな」


 見ていられない光景かも知れない。でもそれでも俺は容赦せず魔物を切り捨てた。これが正しい訳はない。だが平和に暮らしていた人々を殺した罪は重い。


 人の世は情けで成り立つと教わらない魔物に俺は負けない。負けたくない。矛盾している生き様が俺自身の心を蝕んでいくのが分かる。


「ディアス! 中の魔物はどうするの? いちよう糸で捕らえといたけどさ!」


「殺す」


「え?」


「敵は討つ。それだけだ」


「なんだかディアスが怖い。でも敵討ちなんだ、これって」


「そうだ。俺が責任をもって殺す」


「体が勝手に震えてる、後はディアスに任せたいって」


「分かった。魔物は任された。セリカは休んでいろ」


 そう言い残し俺は魔法剣の柄を握り締めたまま家の中まで歩いて行く。セリカのお陰で糸に捕らえられた魔物が観念したかのように座り込んでいた。


「言いたいことは?」


「なにもない」


「そうか」


 本当は訊きたいことがあった。だが口を割る気配などなく俺は魔物を殺める勢いで切り付けた。断末魔を上げることなく魔物は床に倒れ込み微動だにしなかった。


「ディアス!」


 セリカの張り詰めたような声が微かに聞こえたと思い急いで外に出るとセリカは仰いでいた。釣られるように慌てて見上げるとそこには謎の魔人が浮いていた。


「人間どもよ! 北の塔に近付くな! これ以上の警告はせん! 気を付けることだ!」


「待て!」


 謎の魔人は聞く耳を持たず浮いたまま消えていった。どうしてなんだ。どうして北の塔に近付くことを許さない。今になって思うのはギルドの一員が生まれるのを恐れているとかか。


 もしそうだとしてもやり方が間違っている。しかも人の話を聴かない。やはりここは北の塔に向かうべきだろう。その為には一緒に立ち向かってくれる馬車が必要だ。


 アルマの父親は俺とセリカのために戻ってきてくれているだろうか。

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