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第1話 セリカとの出会い

 俺の称号はどんな鑑定士に頼んでも発現しなかった。


 そこで諦めかけていた俺に誓約の聖女の噂が舞い込んだ。なんでも裏鑑定士と言われているらしい。


 なら話は早いとここセイントリア王国まで足を運んだ訳だが――


 俺の素性ではきっと会えないだろうからここはギルドで名を上げるしかないだろう。


 今はギルドの建物が目の前にあり後は中に入るだけだった。


 ゆっくりと歩きながら出入り口の両扉に近寄り押し込もうとしたその時だ。逆に勢いよく両扉が開いた。


 一瞬の出来事に戸惑い尻もちをついてしまった。余りの衝撃に頭がふらついた。


「ごめんよ! 今、急いでいるから! んじゃ!」


 視界が揺らいで前がよく見えない、耳に入れた声だけで分析してみれば女の子のようだが。


 ふと気付いたときには目の前の女の子はいなくなっていた。こういうときに限って嫌な予感がする。


 念のために所持品を探り――


「ない!? ギルドへの紹介状がないだと!?」


 麻袋に入れていたギルドへの紹介状がなくなっていることに気付いた俺は慌てて辺りを見渡した。だが――


 時すでに遅しどこに行ったかさえ分からなかった。これではギルドにさえ登録が難しくなる。どうすれば――


「んん?」


 尻もちをついたままでいたのが功を奏した。あっち側は衝突したさいに落とし物をしたようだ。


「どれ」


 尻もちから立ち上がり落とし物のところまで歩いた。拾い上げて見るとこれは――


「ギルドの認定証じゃないか」


 ならばどうして俺のギルドへの紹介状を盗む必要性があったのか。とよくよく見ればギルドの認定証は別人のようだ。


「そもそも人間の子供ではギルドに入るのは難しいか」


 なんと言えばいいのかが分からない。ただ言えることはこの落とし物は使える。気付いたらきっと戻ってくるだろうからな。


「さて……と。うお!?」


 いきなりまた衝突されたのか。だが今回は尻もちはつかずにいられたぞ。後は気付かれずに追うだけだ。待っていろ、コソ泥め。


 と思いきや目で追った先に女の子が立ち往生していた。なんだ? 逃げてなかったのか?


「あー!? また落としちゃったよー!?」


 どうやら推測するに落とし物を奪い返しに衝突したらまた落とし物が発生したらしい。なんだ? この無限になりそうな出来事は。


「とにかく」


「あー!? 待って!?」


「待つ訳がなかろう」


「う。お城に捕らわれたお姉ちゃんに会うにはそれしか」


「俺にも生活がある。手癖は早い内に直しとくんだな」


「ブー!? あたしだってお姉ちゃんが聖女にならなかったらこんなことは――」


「んん? 聖女だと!?」


「そうだよ。あたしのお姉ちゃんは昔から無称号の人を救済してきた聖女なんだよ」


 まさかな。こんなところで会うとはな。だがギルドの認定証があれば仲間入りができたはずだ。なのにどうしてこの子は――


「あたし達には一番上のお兄ちゃんがいて取り返したかったんだ、だってお兄ちゃんの形見だから」


「なるほどな。故人では効力はなくなっているという訳か」


「うん。……お願い! あたしをギルドに入れて! こう見えてもあたしは今をときめく十六歳なんだから!」


「いや。年齢制限があるだろ」


「グフ」


「しかもときめいても意味なんてないだろうに」


「やめて! あたしの青春の輝きを穢さないで!」


「とにかく子供はさっさと家に帰るんだな。ここからは――」


「叫んでもいいの? 大声で言うから」


「バカな!? そうしたら――。って元に戻っている訳か、これだと」


 そうだった。こいつに衝突されたのは今回で二回目だった。取り返したい物はもうない。ならここは――


「一つだけ」


「一つだけ?」


「お前がギルドに入る方法がある。それは――」


「それは?」


「俺の仲間として加わることだ。とその前にギルドの認定証がないからな。試練を達成しないと貰えない。つまり――」


「つまり?」


「俺と一緒に試練を受けて貰う。ただしあと二年は待たなければギルドの仕事は受けられないけどな」


「駄目! 二年も待てない! やはりここは――」


「待て! 早合点するな! まだ方法がない訳じゃない! 昇級試練に合格すればいいだけだからな!」


「昇級試練?」


「あーいわゆる子供でも大人顔負けにギルドの仕事が受けられる報酬がある奴だ」


「おおー!」


「お? 分かったか?」


「分からない」


「とにかく俺とお前で――」


「あたしの名前はセリカだよ、お前じゃないから」


「そうか。俺の名前はディアスだ。セリカ」


「ディアスね。覚えたよ」


「俺もだ。とにかく今はギルドに入るか、セリカ」


「うん!」


 これが俺とセリカとの出会いだった。ここから聖女と会うための試練が始まるのか。俺とセリカで無事に乗り越えることが出来るのだろうか。

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