第一章 エピローグ 勘違い令嬢は――
公爵邸を辞してお店に戻ると……店先ではサラさんと店長さん、ドワルさんとクロちゃん、そしてアリスが作業を見守っていた。どうやら私が出かけている間に大工さんが看板を取り付けに来てくれたみたい。
「おうシャーロット! 留守にしていたからな! スマンが勝手に取り付けちまってるぜ!」
「あーはいお気になさらず。むしろすみません手伝えなくて」
「なぁに、公爵様からの呼び出しじゃ仕方ねぇってやつよ!」
がははっと笑う店長さんだった。
「……お姉様! お帰りなさいませ!」
と、出迎えてくれたのはエプロン姿のアリス。伯爵令嬢としての地位は失ってしまったので、とりあえずうちの店員として働いてもらうことにしたのだ。ちょうど二階の部屋も一つ空いていたことだしね。
最初は大丈夫かなぁと思っていたのだけど、意外なことにアリスは花の扱いに慣れていたし、接客も問題なかった。むしろアリス目当てでやってくるお客さんが男女共に急増中。
どうやら義母によって幼い頃から働かされていた経験が活きているみたい。幼女を働かせるとか、あの女はほんと……。
ちなみに以前のアリスなら真っ先に突撃してきただろうけど、今日はちゃんと私と店長さんのやり取りが終わるまで待っていた。この子も成長しているのだ。
義母に呆れ、アリスに感心している間に看板の設置は完了。
――ロン・ポワン。
様々な人が行き交い、出会う場所。
私の店。
そして今では私とアリスが働くお店だ。
どうしてこうなったのかはよく分かっていない部分もあるけれど……まぁ、いいんじゃないだろうか。もしあのままアリスが処刑されていたり、修道院に入れられたり、美貌目的のエロオヤジに嫁がされたら気になって夜も眠れないだろうし。
「……じゃあ、アリス。今日も花束の作り方を教えるわね」
「はい! よろしくお願いします、お姉様!」
今までと同じはずの笑顔。なのに、なんだか以前よりも温かく感じられる気がする。アリスの認識が変わったおかげか、あるいは私自身に何か変化があったのか……。
この選択が正しいのかどうか分からない。
もしかしたら後悔する日が来るかもしれない。
でも、今は前を向いて進もうと思う。
人は過去に戻ることはできないのだから。
こうして――
勘違い令嬢は、お花屋さんを始めました。
お読みいただきありがとうございます。
とりあえず一旦完結です。
ご好評いただきましたので、長期連載用にプロット組み直してからまた連載再開したいと思います。ブックマークしておいていただければ幸いです。
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