公爵邸で
なんやかんやで数日後。
私はマリーのお誘いを受け、懐かしきレイガルド公爵家に招かれていた。いや懐かしいと言うほど時間は経っていないけどね。
テーブルセットには私の他にマリーとアルバート様が座っている。身分だなんだというツッコミは今さらだ。なにせ二年も同じ屋敷で過ごしたのだからね。
「シャーロットは伯爵に興味がありませんか?」
と、いきなりそんなことを聞いてきたのはマリー。いやいやどういうこと?
「わたくし、すでにライナ伯爵家の領地や爵位など、諸々全てを入手しておりまして」
「入手しておりますか」
マリーのことだから儲けが出ると踏んでのことだろうけど……諸々全てとはまた豪勢な。
「なのでわたくしが伯爵になることができるのですけど、ライナ家とは血縁がありませんし。直系であるシャーロットが伯爵になってくだされば色々とスムーズに行くのですが」
「……なるほど理解しました。つまり体のいい操り人形が欲しいのだと?」
「違いますわねぇ。伯爵家の件については解決しましたのに、その性格はお変わりないようで」
性格と言われても。人の性格ってそう簡単には治らないのでは? アリスについても方向性が変わっただけだし。
「……あ、変わったと言えば」
一緒にお茶を飲んでいたアルバート様の方を向く私。
うん、やっぱりそうだ。
「あの事件依頼、なんだかアルバート様の顔を見ると胸がざわざわするというか、落ち着かない感じがするんですけど……これ、何ですかね?」
「「そ、それは!? ついに!?」」
素っ頓狂な声を上げたのはマリーと、部屋の隅で控えていた家令・セバスさん。なになに? どうしたの?
「それはいけない!」
ガタッと立ち上がるアルバート様。
「胸の違和感はすぐに検査しなくては! 重大な病気の可能性もある! すぐに医務室へ向かおう!」
私の手を取り、医務室へと駆け出すアルバート様。
「「ちっがーう! このヘタレ!」」
あとにした部屋からマリーとセバスさんの絶叫が響いてきた。いや私の手を引く力強さは『ヘタレ』とは無縁だと思いますよ?




