羞恥プレイ?
「そうだ。お花屋さんっていつがお休みなの?」
「年中開店休業ですね。お客さんが来ないので」
「ちょっと、いきなり重い話をするのは止めてよ……。まぁ、お客さんがいないのは向かいから見ているから知っているんだけど」
容赦のないサラさんだった。泣くぞ?
「じゃあ、これから看板を作りましょう」
「看板?」
「あなたのお店、看板がないもの。お客さんだって入りにくいはずよ」
「あー、そんなもんですか」
よく考えてみれば確かに看板はなかった。黒猫亭には一階と二階の間の外壁に大きく『黒猫亭』と書かれた看板が掲げられているし、店の入り口にもメニュー表があるものね。
「看板を作るって、どうやってですか?」
「ドワルさんが薪を仕入れている木材屋さんに相談したら、看板に使えそうな板を準備してくれたらしいから。今からドワルさんのところに行って作ってしまいましょう」
「え? もう準備してくれたんですか?」
「そうみたいよ? あの店に丁度いいくらいの大きさだって」
「……看板は必要ですけど、でもサラさんたちに手伝ってもらうのも悪いですし……」
と、私が遠慮しようとすると、
「ばーか! 困ったときはお互い様だろうが!」
話を聞いていたらしい店長さんが乱入してきた。
「シャーロットはもう黒猫亭の常連なんだ! 常連の店に客がいなくて困っているなら、客が来るよう手助けしてやるのが人の道ってもんだ!」
「そ、それは有難いですけど……」
大きな声で客が来ないとか言わないでくれません? 反論できなくて心が死にますよ?
「うっし! シャーロットがゴチャゴチャ言う前にさっさと作っちまうか!」
エプロンを外し、私を小脇に抱え、ズカズカと店を出て行く店長さんだった。あれ拒否権ない感じですか?
ちなみに。
端からはどう考えても『婦女子誘拐犯』にしか見えないはずなのだけど。町の人は特に騒ぐことなく私と店長を見送って(?)いた。中には「嬢ちゃんも大変だねぇ」と同情してくる人もいたりして。
同情する前に店長さんを止めてくれませんかね……? 小脇に抱えられたままの移動とかちょっとした羞恥プレイですよ?
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