イケメン屋?
突如として響き渡った若い女性の悲鳴。
シャーロット――ではない。彼女があんな可愛らしい悲鳴を上げるものか。
シャーロットと男子三人が店舗入り口に視線を向けると、そこにいたのは――腰でも抜かしたのか、地面にへたり込むシスター服の女性だった。
年齢はシャーロットと同じか、少し上くらいか。
「あの、どうしました?」
この店の主としてシャーロットが尋ねると、
「……て、」
「て?」
「天国はここにあり……神はここにおわしましたか……眩しい……まぶしい……」
ひえぇえぇ、とばかりに。這うようにして店を出て行ってしまうシスター服の女性だった。
クルードたちが唖然としていると、シャーロットが不満げな目を向けてくる。
「せっかくのお客さんが……。やはり、今、この店の顔面偏差値は高すぎるようですね」
「顔面へんさち?」
「お三方の顔が良すぎるのです。眩しすぎるのです。庶民には刺激が強すぎるのです。それはもう無垢な庶民が地べたを張って逃げ出してしまうほどに」
「う、うーむ……」
確かに。クルードたちはそれぞれが社交界を騒がせる顔の良さであるし、そんなイケメン三人が一緒にいては、庶民の女性は腰くらい抜かすかと納得するクルード。もちろん自分が『イケメン』であるということに一切の疑いは抱いていない。そういうところだぞ。
「そもそも見慣れている私ですら殿下たちが店に入ってきたときは眩しくて目が潰れそうだったのですし。初体験の人であれば尚更でしょう」
シャーロットのその発言を受け、
「……そ、そうか」
「眩しかったのか……」
嬉しそうに前髪を弄んだり襟を正したりするクルードとアルバート。そんな二人を見てカラックは『マジかこいつら……』という顔をする。どんな美女から言い寄られても平然としている二人が、たった一言『眩しい』と言われただけでこんな反応をするとは……。
そんな二人の様子に気づくことなくシャーロットが店の奥、作業場へと続くドアを腕で指し示した。
「さすがにお帰りくださいとまでは言えませんが、どうぞ裏のスペースへ。このままではお花屋さんではなくイケメン屋さんになってしまいます」
「イケメン屋……?」
シャーロットの言い方はアレだが、彼女の商売を邪魔するつもりはないクルードたちはシャーロットと共に大人しく店の奥、作業場に移動したのだった。
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