フラれた
剪定とナイフが出来上がるまではしばらく時間が掛かるということで、今日のところは大人しく帰ることにする。
入手したのはお花用のハサミと、代品(?)のナイフ。
正直このハサミがあれば剪定はいらないと思うし、このナイフを購入してしまえばわざわざ新しいナイフを作ってもらう必要はないと思う。
ただ、もう注文はしてしまったし、金貨も支払ってしまったのでこのままお願いすればいいか。なんなら予備として取っておけばいいのだし。
代品(?)のナイフはドワルさんに頼んで購入してしまうのもいいわね。まぁそれは実際の使い心地を試してみてからで。
行きとは別の道を通り、これまたサラさんのおすすめの店を紹介してもらいながら帰宅。行きと同じように肩に乗っていたクロちゃんに確認する。
「どうする? このままうちの子になっちゃう?」
『にゃー』
お前の相手はゴメンだぜ! とばかりに私の肩から飛び降り、そのまま路地裏へと駆けていってしまうクロちゃんだった。
「あら、フラれちゃったわね?」
「ふふふ、これからじっくり落としてみせますともさ」
そんな冗談を口にしながら私はサラさんに別れを告げる。
とはいえ、またお昼ご飯と夕飯のときに再会するんだけどね。もはや自炊する気など微塵もなくなっている私であった。食品の買い出しをしたり台所に立って――とやるよりは、少し歩いて黒猫亭に行った方が簡単だし。
◇
お店に入り、ショーケースの中の切り花たちに向き直る。……はたして、これだけの量の切り花を使い切るまでにいくつの花束やアレンジメントを売ればいいのだろう?
ちょっとは考えてから収穫しろ。と、自分自身にツッコミを入れてしまうけど……しょうがないじゃない。とうとう開店だーお花屋さんだーと喜び勇んでハイテンションになってしまったのだから。
リュヒト様のところで収穫したので、元手はゼロ。たとえ売れ残って廃棄したとしても私が損をすることはない。
ただなぁ、それはさすがに勿体ないわよねぇ。
というわけで私はショーケースを開け、切り花たちに状態保存の魔法を掛けたのだった。あまり長期間花が終わらないと不自然なので、弱めに。
……あ、そういえば。クルード殿下に売った花束には普通の強さで状態保存の魔術を掛けてしまったけど……。…………。……ま、いいか。殿下も長持ちした方が嬉しいでしょうし。
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