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契約結婚は円満に終了しました ~勘違い令嬢はお花屋さんを始めました~  作者: 九條葉月


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凄い職人



「――はははっ! いいな嬢ちゃん! 気に入った! 物の価値ってものが分かっているじゃねぇか!」


 しっかりと金貨を受け取りながら豪快に笑うドワルさん。こういうのって『気に入った! 金はいらねぇ! タダでくれてやるよ!』ってパターンじゃないの?


『にゃー』


 そんな都合のいい話があるわけないだろう? とばかりに鳴くクロちゃんだった。夢くらい見てもいいじゃない。


「嬢ちゃんは良いものを見極める目を持っているみたいだからな。この金貨の支払いでナイフも作ってやるよ」


「え? いいんですか?」


「おう、ただし初回だけだからな?」


「それはもちろん」


「で、あとはナイフだったか……。花屋でナイフってのがよく分からねぇが、何に使うんだ?」


「水切りですね」


「みずきり?」


「水の中に茎を入れて、水中で茎を切ることによって新しい切り口からすぐに水を吸い上げ、水揚げが良くなるんです。やはり切り口が古くなると水の吸い上げも悪くなりますので」


 もっと細かく言えば水中で水切りする花ばかりではなく、たとえば菊なんかは手で折ってしまった方が水揚げが良くなるとされているし、茎を切ったあとに中心部の綿みたいなものを掻き出す必要がある花もある。


 でも、そんな細かいことを言い出したらキリがないので、ここはとにかく『水中で水切り』という基本情報だけを伝える。


「ほぉ。よく分からんが、水の中で使うなら錆びない方がいいな」


「あとは折りたためるといいですね」


「折りたたむ?」


「こう、真ん中で折れまして。柄の中に刃を収納できるようになっているナイフです」


 お花屋さん御用達、某スイスな折りたたみナイフの絵を描く私。そういえばみんななんであのナイフを使っているのかしらね? 名前がそのままずばり『フローリストナイフ』だから?


「ほほぉ。ナイフを折りたたむとは面白い……。柄の中に刃が収まるなら柄を準備する必要はないか」


「はい。柄から抜いたあと、どっかに行ってしまう可能性もありますし」


「かなり細かい調整が必要そうだが……だからこそ面白ぇ。いいぜ、注文通り作ってやるよ」


「ありがとうございます!」


「いい返事だ。ナイフができるまでのつなぎ(・・・)にはコイツを使っていてくれ」


 と、再び店の奥に引っ込み、小さなナイフを持ってくるドワルさん。


 なんだか既視感。


 さっき渡された枝が残っていたので、ナイフで斜めに切ってみる。


 ぬるっ、と。

 やはりぬるっ、と。


 まるで力を込めていないのに美しい断面となる枝だった。やっぱりこれがあれば折りたたみナイフはいらないんじゃない?


 ドワルさん、もしかして凄い職人さんだったりします?



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