鍛冶師ドワル
「おい嬢ちゃん。俺の店で騒ぐな」
「おっとこれは失礼しました鍛冶師さん。お名前をお伺いしても?」
「ドワーフのドワルだ」
「ドワルさん、はじめまして。お会いできて嬉しいです。私の名前はシャーロット。この街でお花屋さんを始めることになりました」
「……あぁ、ギルド長が話していたのは嬢ちゃんのことか」
私の話ってどこまで通っているんだろう? 私の店からここまではかなり距離があるのだけど。やっぱりお貴族様案件だから広めに通達してあるとか?
ま、それはいいとして。
「ドワルさん。お花用のナイフとハサミが欲しいんですけど、作っていただけますか?」
「あぁ、こいつの紹介だから別に構わんが……花用?」
なにやら難しそうな顔をするドワルさん。
「……ふふふ、なるほど? これは『俺に武器を作って欲しくば実力を示してみろ!』という流れですね!?」
「いや違うが?」
「ふっふっふっ! かんっぺきに理解しましたよドワルさん! ここは正々堂々真正面からぶちのめしてあげましょう!」
「だから違うが? あと、いくら何でも嬢ちゃんの細腕に負ける気はせんが?」
さすがドワーフ。さすがは巌のような二の腕を持つ男。さすがの凄い自信である。でも、私だって花屋としての仕事をするならナイフとハサミは必需品。負けるわけにはいかないわ!
「……嬢ちゃん、人の話を聞かないってよく言われないか?」
「いえ別に?」
「…………」
なぜか呆れたご様子のドワルさん。ははは、何をおっしゃいます。私ほど大人しく人の話に耳を傾ける好人物はいませんよ?
「……おいガロン。またおもしれー女を連れてきてくれたじゃねぇか?」
「いや、俺もまさかここまでとは……飯を食っているときは普通だと思ったんだがなぁ」
「ま、とにかくこのままじゃ話が進まねぇな……」
店長さんと小声で何事かを話し合っていたドワルさんが、私に向き直って不敵な笑みを浮かべた。
「――はははっ! その細腕で俺と戦おうとはいい度胸じゃねぇか嬢ちゃん! 気に入った! その度胸に免じて何でも好きなもんを打ってやるよ!」
「! よろしくお願いします!」
どうやら私の覚悟はドワーフすら動かしてしまったらしい。凄いこともあるものだ。
「……どうよ、ざっとこんなもんよ」
「なるほどなぁ。こう扱えばいいのか……」
「参考にしましょうか」
なにやら小声で話すドワルさん、店長さん、サラさんだった。
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