朝ご飯
クロちゃんの座っている窓に近づき、外を確認。
「お、黒猫亭は開いているわね。じゃあ朝ご飯にしましょうか」
『にゃあ』
「クロちゃんも来る?」
『にゃあ』
窓枠から室内に飛び降りるクロちゃん。付いてくるってことかしらね?
窓を閉め、鍵を掛けてから私は二階から一階へと降りた。
……そういえば、クロちゃんは普通に窓枠に座っていたけれど、昨日は窓の鍵を閉めなかったんだっけ? いやそもそも窓を確認すらしなかったか……。
『にゃー』
不用心な女だな、的な鳴き声を上げるクロちゃんだった。まぁ大丈夫でしょう。いざとなればリュヒト様が出張ってきて助けてくれるでしょうし。
『……にゃあ』
なにやらつまらなそうに小さく鳴くクロちゃんだった。
◇
朝ご飯は黒パンにベーコン、そしてザワークラウトっぽい漬け物だった。庶民向けの食堂でお肉が食べられるとは……やりますね店長さん!
ちなみにそのベーコンはオークの腹肉であるらしい。う~ん……。
とても美味しかったです。はい。
『にゃあ』
なんだかんだで食堂にまで付いてきていたクロちゃんは、店長さんから出された廃棄予定の肉をがつがつと食べていた。さすがにベーコンは塩分が多そうなので遠慮したのだ。
「うっし。食い終わったら鍛冶屋に行くか」
そう確認してくる店長さんだけど、やはり申し訳なくなってしまう。
「お店は営業中みたいですけど、本当にいいんですか?」
「いいんだよ、どうせ昼時になるまでは暇になるんだからな。それに朝飯に遅刻するような寝坊野郎には保存用のパンでも食わせとけばいいんだ」
がっはっはっとばかりに笑う店長さんだった。う~ん豪快。豪快な人だ。ちなみに『パンでも』とは言うけれど、王都以外では毎日のパンにも事欠く労働者も多いらしい。この辺の意識の差はさすが王都って感じなのだろうか?
労働者の困窮問題。真っ当な貴族なら領主として頭を悩ませるのだろうけど……私はしょせん伯爵令嬢だし、伯爵令嬢ですらなくなる予定だし、そういうのは偉い人に任せましょう。
というか平民代表として無責任に殿下を批判して……いやダメだわ。処刑フラグだわ。庶民の首なんて簡単に飛ぶ、そうここは身分制度の世界……。




