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契約結婚は円満に終了しました ~勘違い令嬢はお花屋さんを始めました~  作者: 九條葉月


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お食事


 私が頼んだのは野菜や豆が大量に煮込まれたスープと、黒いパンだった。いわゆる黒パンというもので、固いけど安いので庶民の主食となっているものだ。あと日持ちがするので冒険者の必需品だったりする。


 前世の黒パンはライ麦を原料としていたけど、この世界でもそうなのかどうかは知らない。というかそもそもライ麦があるのかどうか。さすがに農業はやったことがないし。


 そんな黒パンの食べ方は、スープに浸しながら少しずついただくこと。前世の感覚では少しお行儀が悪いかもしれないけど、郷に入っては郷に従え。ここは気にせず食べてしまう。というか日が経った黒パンは固くなってまともに噛み切れないし。


「ほうほう」


 スープの塩味とパンの酸味が合わさって……意外なことにマリアージュになっていた。最初は違和感があるけど慣れてくるとこれはこれで。


 従業員のお食事の時間なのか自然な流れでサラさんも対面の席に腰を下ろし、食事をしていた。


 それはいいのだけど、量が、量が凄い。漫画でしか見たことのないようなお肉の塊。分厚いステーキ。それを美味しそうな顔でパクパク食べるサラさんであった。


 庶民の人ってお肉を食べられるんですね?


 と、尋ねそうになったけどあまりにも失礼なので自重した私である。


 ただし、そんな私の疑問は顔に出ていてしまったようだ。


「店長は元冒険者でね。色んな廃棄肉を色んな手段で入手できるみたいなの。このお肉も筋ばかりで本来ならお客さんには出せないものらしいわよ?」


「へ、へぇ、そうなんですか……」


 そんな筋ばかりのお肉をパクパク食べられるサラさんは一体何なんです? という新たな疑問は胸の中にしまっておいてと。


 ここの食事、やはり慣れてくると普通に美味しいわね。もちろん公爵家での食事の方がいい食材を使っていたのだろうけど……なんだろう、言い方は悪いかもしれないけど、この素朴な感じの方が私には合っているかもしれない。


「これなら毎食ここで食べてもいいかもしれないですね」


 一応メニューを見て値段を確認。……うん、それほど高くはない。むしろ毎回自炊をすると考えれば安いかもしれない。一人暮らしの自炊って何かと食材を余らせがちだし。


 あと、単純な問題として……私の料理はさほど美味しくないのだ。貴族令嬢としては(紅茶を淹れるくらいは大丈夫でも)厨房に立っての料理なんて許されないし。冒険者として野宿するときはかなーりワイルドな料理ばかり食べていたし。……前世では半額弁当やらスーパーのお総菜やらカップラーメンばかりだったもの。


「おっ、優良顧客を捕まえちゃった? これは店長にお給料を上げてもらわないとね」


 からからと笑うサラさんだった。なんというか、いい人そう。これはマリーに続いて二人目のお友達になれそうな予感がする、かも?




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