お? なんだこの展開?
「え~っと、とりあえず殿下とアルバート様はただの友人であるということにしておきまして」
「いや『ということにして』じゃないんだよ。事実ただの友人なのだから」
ははーん、なるほど。最初はただの友人だと思っていたのにパターンですか――痛っ、また空手チョップされてしまった。女の子に手を上げるのはいけないと思いまーす。
いや殿下をパワハラとかDVで告発したところで消されるのはこっちなのだけどね。そうここは身分制度の世界……。
あまり失言はしないようにしましょう、ということで殿下の用事を済ませてしまうことにする。
「何かご購入いただけるんでしたっけ?」
「うん。何にするかはシャーロットに任せよう」
「なるほど、では男らしく『この店の花をすべていただこう。現金払いで』ということで――」
「女性向けの花束をいただこうかな」
華麗なる前言撤回であった。何とも男らしくなく、王子様らしくないことだ。
「花束ですか」
まだ保水のための資材は準備できていないから……切り口に状態保存の魔術を掛ければいいか。さすがにお客さん一人一人の花束にかけ続けるのは大変だけど、殿下なのだからサービスということで。
「状態保存……?」
「では花束ですが、予算はどれくらいにしましょうか?」
「予算、というと?」
「値段によって使う花の数が変わってくるんです。銅貨一枚なら花は五本くらいでしょうか。銅貨五枚出していただければ腕で軽く抱えるくらいの大きさの花束になります」
「そうか、大きさが変わるのか……。あの人は花が好きか分からないから、今日のところは銅貨一枚にしておこうかな。お好きなようなら今度からは大きな花束を頼むとしよう」
「……ほぅほぅ」
あの人、か。相手を尊重したような呼び方、もしや殿下の恋人さんなのでは? ははーん、殿下はまだ婚約者を作らないと話題になっていたけど、すでに意中の女性がいるからってことだったのかー。
「……いや、まぁ、意中の女性がいることは否定しないが」
おっと言質取りましたよ? はぁはぁなんとあの女たらしで女好きで女を侍らせまくっていた殿下に意中の人が! これは祝杯をあげるべきでは!? 同じ生徒会だった誼で!
「私はそろそろ泣いてもいいと思うんだ……」
なるほど好きな人がいるのにまだ告白できておらず泣きたい系のパターンと。なんということでしょう。殿下は女好きだけど顔はいいし、女好きだけど頭もいいし、女好きだけど将来は国王になるか大公になる御方。そんな彼から好意を向けられて答えないとは、その女性はどんなつもりなのかしらね?
「ただ単に鈍いだけだと思うな」
鈍いから花束を持ってストレートに告白をすると。わぁ、いいなぁ、青春だなぁ。私もそんな恋がしてみたーい。
「……ならば、してみるかい?」




