殿下とティータイム
いくら打たれ弱いとはいえ殿下は殿下。そしてお花を購入していただく気もあるという。ならばこちらとしても丁重におもてなししなくちゃね!
せっかく豪勢なテーブルセットがあるので殿下にお座りいただき、お茶を淹れてから私も対面に腰を下ろす。本来なら(元)伯爵令嬢が殿下と一緒のテーブルに着くことなんて許されることじゃないのだけど、かつての生徒会活動でその辺がだいぶ緩くなっている私たちだった。
お茶で喉を潤し、一息ついてから殿下が私を見た。
「そういえば、先ほど猫に引っかかれていたが、傷はもういいのかい?」
「えぇ。痛くないから治ったんじゃないですかね?」
私がテキトーに答えると、殿下は私の頬をじーっと凝視してきた。なんという真剣な目。私が普通の乙女だったらドキドキしちゃうところだ。
「……確かに。相変わらず素晴らしい回復力だ」
人の顔を凝視しておいて、なぜか呆れたご様子を隠さない殿下。乙女の顔を見つめながらため息とは失礼な。
「シャーロット。今のキミは公爵家を出たのだから、あまり目立つようなことはしない方がいい」
「え? あ、はい?」
「その回復力は人々の耳目を集めるからね。なるべく隠した方がいいだろう」
「はぁ、とは言われましても、自動発動系のスキルなので自分では何とも……」
その名は自動回復、だったかな? 幼い頃からよくケガをしていたので自然と鍛えられ、スキルレベルもアップしてしまったのだ。
「……今度魔導師団あたりに調べさせておくか」
何かしらないけど、また人に仕事を押しつけるおつもりのようだ。さすがは後に王となるかもしれない御方。生まれながらにして人の上に立つ術をご存じらしい。
「……シャーロットって実は私のことが嫌いだったりするかい?」
「へ? なにをまさか。矮小なるこの身で殿下をお嫌いになるはずがないでしょう?」
「そうかなぁ? そうかなぁ……?」
なにやら悩ましげな殿下だった。きっと王宮はぐちゃぐちゃの人間関係が渦巻いていて、殿下も人を信頼できなくてお疲れなのでしょう。
「いやぁ、キミよりは単純で分かり易いかな?」
何事かをボソッとつぶやく殿下だった。




