まさか!?
普通に考えれば契約終了後も守秘義務があるはずだけど……知っているのなら変に誤魔化す必要もないか。というか王太子殿下に嘘をつくわけにもいかないし。
「はい、円満に終了しました。見てくださいよこのお店! こんなにも立派な店舗を準備してくださって! いやぁアルバート様は義理堅いですよね!」
「……義理堅いというか、惚れた女に弱いというか」
「惚れた?」
アルバート様が、私に? いやいやないですって。今では立派に公爵としての仕事をこなし、将来は宰相になるんじゃないかって噂されるアルバート様が、こんな庶民予定の私に惚れるわけがないでしょう。私を選ぶくらいだったらその辺の野良猫を選んだ方がマシですって。
「いやさすがにそれはないんじゃないかな?」
「……それもそうですね。私などと比べるなんてお猫様に対して失礼でしたか」
「とうとう動物に対してすら謙遜しだした……」
まったく殿下の妄想にも困ったものだ。アルバート様がよりにもよって私なんかに惚れるだなんて。たしかに仲良く見えたかもしれませんが、それはあくまでビジネスの関係。仲が良い男子と女子がいたらカップルに違いないと妄想してしまうのは中学生で卒業するべきですよ? いやこの世界に中学校はないか。
「よく分からないがバカにされている気がするね」
それは気のせいですね。私などが殿下をバカにできるはずがないのですから。
「そうかなぁ? 結構バカにしている気がするけど……。まぁ、いいか」
殿下が真っ直ぐ私を見つめてくる。例の輝くようなキラキラしい瞳で。
「契約結婚が終わったのなら……私にもチャンスがあるのかな?」
真剣な目。
冗談や嘘ではなさそうだ。
契約結婚が終わり。
チャンス。
となれば……。
「まさか、殿下は恋を!?」
「うん」
「アルバート様に!?」
「……うん?」
「この世界ではまだ男性同士の恋愛は御法度ですが! いやしかしいずれそんな時代も来るでしょう! 私は応援しますよ! 殿下とアルバート様の恋――痛い!?」
殿下から空手チョップされてしまう私だった。この世界にも空手チョップってあるのか……。
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