何で知っているのか
「殿下はなぜこのような木っ端みたいな花屋に?」
「自分で自分の店を『木っ端』と言うのはどうなんだい?」
「……なるほど、開店すらしていない今の状況では木っ端を名乗ることすら不遜であると? これは失礼いたしました」
「う~ん相変わらず。相変わらずだなぁ」
困ったような顔をするクルード殿下であった。王太子殿下に対して不正確な物言いをした上、困らせてしまうとかセルフギロチンしてお詫びするべきでは?
「どうやって一人でギロチンをするつもりなのかな……?」
まるで心を読んだかのようなツッコミをしてくる殿下だった。生半可な考えの謝罪方法では殿下の心は満足されないらしい。ここはもっとド派手で確実な謝罪方法を考えなくては!
「また暴走しているね……」
「う~ん、では、王太子殿下のお心を乱した罪で、魔導師団にお願いして爆発四散するというのはいかがでしょう?」
「いかかでしょう? じゃないよ……」
「やはり飛び散る肉片と血液の処理が問題ですか……」
「そうじゃなくて……」
「ではどこかの湖か海に入水――いや発見者にトラウマを与えてしまいますか。飛び降りも同じ理由で却下。となると『魔の森』に分け入って魔物のエサに……」
「シャーロットは、私がこの程度で怒り、謝罪を要求するような人間に見えるのかな?」
「っ! それもそうでした! 私の知っている殿下は生徒会の仕事はサボるし面倒くさいことはすべてアルバート様に押しつけ自分は不特定多数の女子生徒と遊び回るようなクズ系王子でしたが、器は大きいですものね! このような私の無礼を許してくださるとは何と寛大な!」
「いや、今が一番無礼だからね?」
「今が一番……つまり過去より今が無礼であると。生きているだけで無礼となれば、これはもう呼吸を止めるしか……」
「ところで」
両手を打ち鳴らし、私の謝罪検討を打ち切る殿下だった。つまり私のような矮小な存在からどんな謝罪をされても無意味だと言いたいらしい。さすがは殿下である。
「シャーロット。公爵邸を出たということは、もうアルバートとの契約結婚は終了したのかな?」
当然のように契約のことを知っているっぽい殿下だった。たぶんアルバート様は秘密にしていたと思うのだけど。




