ティータイム・2
まずはティーポットに水を入れ、両手で包み込むようにティーポットを持つ。
「――――」
手のひらに魔力を集中させ、ティーカップごと中の水を温めてお湯にする。前世での電気ケトルを参考に開発した技だ。
理屈としては魔法で加熱するのではなく、魔素を高速振動させて加熱する……ということになるのだろうか? 自分でやっておいて何だけど、頭で考えているわけではないので本当にこの理屈が正しいのかどうかは分からない。試してみたらできたから使っているだけで。
ただ、炎系の魔法を使って加熱するよりは魔力を使わないし、安全だ。……あと、魔法発動の時に『いと貴き紅蓮の神よ――』みたいな呪文を口にしなくていいので、恥ずかしくないという利点もある。中二病は前世の時点で卒業したのだ。
「何度見ても不思議な光景ですわねぇ。呪文も使わず、周囲の魔素も消費せず。だというのにちゃんとお湯になっているのですから」
どこかうっとりとした目でティーカップと私の手を見つめるマリーだった。
温めたお湯はそのままティーカップに注いでしまう。こうすることによってティーカップが温まるのだ。
カップが温まった分、お湯の温度が下がってしまったのでカップの中で再び加熱。
空っぽになったポットの中に、人数分の茶葉を投入。ティーカップで温め直したお湯を再びポットに戻す。このとき勢いよく注ぐのがコツなのだとか。
ポットの蓋を閉め、しばらく放置して茶葉を開かせる。この茶葉だと三分くらいだろうか?
蒸し終わったら蓋を取り、ポットの中をスプーンで軽く混ぜる。
茶こしで茶ガラをこしながら、お茶の濃さが均一になるようにそれぞれのカップに少しずつお茶を注いでいく。いわゆる回し注ぎというものだ。
ここで重要なのが最後の一滴まで注ぐこと。このベスト・ドロップが重要らしいのだ。
淹れ終わったお茶をマリーに差し出すと、まず彼女は香りを楽しむようにカップを持ち上げた。
「……いい香り。シャーロットが出て行ってしまってお茶の心配をしてしまいましたが、こうして飲みに来ればいいんですものね」
貴族令嬢らしい優雅さで口を潤すマリー。もしかしなくても毎日お茶を飲みに来るつもりですね?
ま、私もこの街に知り合いがいるわけでもないし。友達であるマリーとも交流が続くのならいいかと考えてしまうのだった。
……なんだかリュヒト様が『そうやって流されてしまうからダメなのだ』と突っ込んできた気がするけど、気のせいに決まっているので気にしないことにする。
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