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第99話 コボルト


"最近たまにいるんだよなあ。まともにダンジョン攻略する能力や度胸がないから、実力以下のモンスターをイジメている配信者…… @ルートビア"

"ああいった配信は何が面白いのかまったく分からないんだけど…… @ルートビア"

"人間相手にできないことを弱いモンスター相手にやってストレスを発散するような性根の腐った人間もいるってことだ。それと反対するコメントを煽り散らかしてアンチを作って炎上させて再生回数を稼いでいるんだろ。 @†通りすがりのキャンパー†"

"はっきり言って、ああいう輩は全員モンスターに食われちまえと思っている。 @たんたんタヌキの金"


 木の陰に隠れながら、4人のダンジョン配信者の様子を見ていると、リスナーのみんながコメントをしてくれた。


 ……ぶっちゃけ俺もタヌ金さんの意見と同じだ。他の人に迷惑を掛ける迷惑系ダンジョン配信者や弱いモンスター相手をイジメたり拷問したりするような配信者は全員モンスターのエサになればいいと思っている。


 ダンジョン法もこういうくだらない配信をしている配信者を取り締まる規制を作ってほしいものだ。


「ゲギャギャ!」


「どうやら辛味はしっかりと感じてくれているようですね~」


「ぶっちゃけ、モンスターに味覚があることはすでに研究でも分かっているんだけどな」


「おっと、そいつは内緒だぜ! だけど本命のギガントキャロキアをモンスターに食わせた配信はほとんどないだろ! 何せこいつを手に入れるのには結構苦労したもんな!」


「値段も高かったし、危険物扱いだから面倒だったよな。16階層のコボルトに食わしてやるのはちょっともったいないくらいだぜ。視聴者のみんな、その分、配信を見ているみんなはいいねとチャンネル登録を頼むぜ!」


「………………」


 あまりにも酷いやつらで思わず手を出したくなる衝動を何とか抑える。


 残念ながら、今のところはモンスターを必要以上に痛めつけることを規制するダンジョン法はない。あるとしても暴力的、または残虐なコンテンツや危険な行為を助長する行為として配信動画に違反報告するくらいしかないのが現状だ。


 仮にここで俺があの配信者たちを止めるために手を出したら、俺の方が捕まってしまう。さすがにその場合は俺に多少の情状酌量はつくだろうけれど。


 いずれは動物愛護法みたいにモンスターへの残虐行為を制限する法律ができるかもしれないが、どうしてもそういった法律は後回しになってしまうとキャンパーさんが以前に言っていた。


 ここでこっそりと投擲をしてあのコボルトを楽にしてやることもできるが、どうせあいつらは別のモンスターにまた同じことをするに違いない。あのコボルトには同情をするが、面倒ごとを避けるためにも、ここは立ち去るしかないんだよな。


「ゲギャギャ!」


「ゴーヤと青汁もしっかりと苦みを感じているみたいだな」


「ゴーヤと青汁は栄養満点だから、むしろ元気になっちゃったりして。俺達やっさし~! そんじゃあ、ぼちぼち本命いっちゃいますか!」


「リスナーのみんなもこのギガントキャロキアを見てみてよ。素手で触ると手が爛れるし、火を通さずに食べると器官が腫れるくらいじゃすまないらしいからな。おい、ちゃんとコボルトの口を押えておけよ」


「オッケー任せとけ! ……んん、ちょっと待て。奥から何匹かモンスターが来たぞ!」


「同じコボルトか? もしかして仲間を助けに来たんじゃね、ウケる~」


「ついでにもう一匹くらい捕まえておこうぜ!」


 あいつらが言うように、奥の方に別のコボルトが複数現れた。モンスターは実際に生きていて群れで行動することもあるし、もしかしたら本当に捕まった仲間を助けに来たのかもしれない。


 そもそもコボルトはまとまった数の群れで行動するモンスターだ。この階層でコボルトはそこまで強いモンスターではないが、数が厄介なモンスターに分類される。


「ゲギャ……」


「へへ、ざまあみろ!」


「ちっ、ワラワラと集まってきやがって! おい、また別のコボルトの群れまでこっちに来やがったぜ!」


「くそ、雑魚が配信の邪魔してんじゃねえよ!」


 どうやら4人はそこまで実力がある探索者ではないようだ。それに動きからして経験値のマージンもあまり取れていないみたいだな。この階層を探索するなら、もっとモンスターを倒して身体能力を上げてから挑むべきだと思うぞ。


 だが、ある意味ちょっとほっとした。モンスターの肩を持つわけではないが、ああいった連中にモンスターがいたぶられるのは見ていて気持ちがいいものじゃない。さすがにあれだけコボルトが集まってきたら、あの連中も馬鹿な配信は止めて撤退するだろう。


「んだよ! 邪魔するんじゃねえよ!」


「痛え! くそっ、てめえらぶっ殺してやる!」


「………………」


 ……というか、まだ撤退しないのか? 後ろにいたコボルトはまた別の仲間を呼びに行ったみたいだから、そろそろ撤退しないと本気でヤバくなるぞ。


「お、おい。ちょっとヤバくねえか?」


「ああ、どんどん集まって来るぜ。撤退した方がよくねえか?」


「ふざけんな! コボルトごときに撤退してたまるかよ!」


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