第97話 最新ドローン
「……さて、一応最新のドローンに新調してみたんだが、いつもと比べてどんな感じだ?」
"おお、かなり良くなっているぞ! 画質もだいぶ良いし、ヒゲダルマが滑らかに動くようになった感じだ! @XYZ"
"それに細かなブレもなくなっているな。やっぱり最新式のドローンはブレ補正機能が半端じゃないぞ。 @月面騎士"
"これまでの旧式のドローンとのギャップがあるから、余計綺麗に見えるな。 @†通りすがりのキャンパー†"
どうやら反応は上々のようだ。
昨日夜桜の店で新しいドローンを新調し、他にも配信用のデバイスやソフトなんかを見繕って、今日の限定配信で早速使ってみた。こちらからはあまり分からないがリスナーさんたちの反応を見るに問題はなさそうだな。
「性能が上がっている割にドローンの大きさも小さくなって、より遠くから動画を撮れるようにもなっているな。さらに頑丈になって飛行速度も上がっているらしいから、モンスターとの戦いの中で壊れる可能性もより減っているってさ。それにしても最近のドローンの進歩はすごいんだな」
"そりゃ日々技術は進歩しているからな。最近のダンジョンでの装備や配信用のドローンなんかは半年に1回くらい新調した方がいいと思うぞ。 @たんたんタヌキの金"
"まあ、お金のある配信者限定だけれどw 本当に高価なドローンなんかは結構するからね。 @ルートビア"
"視聴者的には全然こっちのほうが見やすくていいぞ。金はあるんだから、ガンガン新しいのに変えていこうぜ! @XYZ"
「配信の映像が綺麗に映るのは良いことなんだが、設定とかがめちゃくちゃ面倒なんだよ。今回は店の人にいろいろと聞いて、多少は使いこなせるようになったけれど、俺ひとりだったら使いこなすまでに相当時間が掛かったと思うぞ……」
今回のドローンデータの引継ぎなんかは夜桜にすべて任せて、基本的な使い方も夜桜にいろいろと教わった。連動する腕輪のデバイスも新調したこともあって、いろいろと覚えることが多かったんだよ。
動画や配信用のソフトなんかのやり取りをするために定期的に連絡を取っている月面騎士さんにもいろいろと質問をして、ようやく基本的な使い方だけは理解した感じだ。
旧式のドローンと比べて、いろいろな機能なんかも追加されているみたいだが、使いこなせる気がまったくしない……
"相変わらずヒゲダルマは機械音痴だよな…… @月面騎士"
"まあ、数年の間ダンジョンに引きこもって、現代文明から離れていたらそうなっていても仕方がないかもしれん。 @†通りすがりのキャンパー†"
"方向音痴に機械音痴とかwww @ルートビア"
"そりゃ、デバイスにナビや乗り換え案内があるのに道に迷うわけだ。 @たんたんタヌキの金"
"ダンジョンの外で普通に暮らしていけるか、本気で不安だな…… @XYZ"
「まあ、ダンジョンの中なら機械が使えなくても問題ないからな。人間、炊飯器や洗濯機なんかなくても普通に生活できるぞ」
ご飯なんかは炊飯器を使わずに毎回薪で炊いている。こちらの方が炊飯器で炊くよりも美味しくできるし、失敗したり試行錯誤をしながら料理するのも面白い。さすがに火を起こす時はマジックアイテムを使用するがな。
洗濯も洗濯機は使わずに自分で手洗いだ。ダンジョン内だと外よりも身体能力が上がっているからすぐに洗うことができる。時間だけはいくらでもあるから、こういった不便を楽しむというのもいいものなんだよ。
"生活が完全に原始人のそれでワロタwww @ルートビア"
"そのうち火起こしも木を擦って点けそうだな。まあ、今のヒゲダルマの身体能力なら一瞬で点くと思うが。 @†通りすがりのキャンパー†"
"さすがに洗濯や炊飯くらいは文明の利器を使おうぜw @たんたんタヌキの金"
「俺だって照明くらいは使っているぞ。……まあ、逆に言うと使っているのはそれくらいか」
照明は夜桜に調達してもらったものを使っている。ダンジョン産の魔石を使っているから、エネルギーの心配はする必要がない。水やお湯はマジックアイテムがあるし、物を冷やすようなマジックアイテムがある。
冷蔵庫の代わりに入れた時点で時間が止まるマジックポーチもあるし、ダンジョンの外の機械なんかは本当にそれくらいだ。
「ドローンも基本的な配信の仕方が分かれば問題ないぞ。デバイスも検索とかできればそれで十分だしな」
"……シンプル過ぎるデバイスに需要があるのかと思っていたけれど、本当にヒゲダルマみたいな客もいるんだろうな…… @XYZ"
"ああ、あの文字が大きくて年配の人が使うやつw @ルートビア"
"ワンタッチで電話ができるからな。実はうちの親父が持ってたりする。 @†通りすがりのキャンパー†"
おじいちゃんとかが使うデバイスだな。
いや、俺もさすがにそこまでではないぞ!
つい先日も夜桜のやつに勧められたが、さすがにあれは冗談のはずだ。……はずだよな?
「さて、それじゃあドローンの試運転がてら、ついでに低い階層のモンスターの食材を集めに行ってくるとするか」




