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第9話 お礼


「す、すみません! それはその……」


「えっと……」


 なにやら2人とも気まずそうにしている。


「今は好きで引きこもっているだけだから、そんなに深刻な話じゃないぞ。今は家を買おうと思えば買えるし、たまにはダンジョンの外にも出ているからな」


「そ、そうなんですね! それならよかったです!」


「う、うん、外に出ることは大事だよね!」


”うわあ~年下の女の子に気を遣われる男とかwww @たんたんタヌキの金”

”男として情けなさすぎて涙が出てきましタワーw @†通りすがりのキャンパー†”


「やかましい!」


 思わずリスナーさんにツッコんでしまった。


 ぶっちゃけ図星だよ! 年下の女の子2人に気を遣われると逆につらい……


「それで、そっちの方は大丈夫なのか? 彼氏ではないらしいけれど、あの男は無事だったんだよな?」


 さっき聞いた話によると、姉のほうと一緒にいた男は彼氏ではなかったらしい。どうやらコラボと言って、お互いの配信番組に一時的に出演していただけだったようだ。


「はい。さっき見たら、()()()()()無事に戻れたみたいです。それとは別に瑠奈のドローンから私たちの無事も報告して、救助も取り下げてもらっています」


「そ、そうなんだ……」


 華奈がちょっと怖い……


 そりゃまあ、自分を囮として置き去りにしたやつなんだから当然のことか。実際のところ、俺が助けなければ2人とも助からなかったわけだし。


「お姉を置き去りにして……あいつだけ死ねばよかったのに!」


 ちょっと瑠奈、ストップ! 配信じゃ映せない顔になっているから!


”ふむ、闇落ちした2人……悪くない! @月面騎士”

”なんかこう、新しい扉が開かれる予感! @たんたんタヌキの金”


 ……うちのチャンネルのリスナーさんもいろいろとヤバイな。とりあえずこの話題は止めておこう。


「ま、まあ2人とも無事で本当に良かった。さて、そろそろお開きにするか。両親もだいぶ心配しているだろ」


「両親はいないから大丈夫だよ」


「………………」


”おい、さっきたったひとりの家族って言ってたんだから、察しろよ!”

”これだからデリカシーゼロ男は…… @月面騎士”


 みんなのいう通り、今のは完全に俺の失言だ。確かに彼女はさっきそう言っていた気がする。あまりにも2人が明るい様子なので、そんなことはすっかり忘れていた。


「……すまん、失言だった」


「いえ、全然気にしていないですよ」


「さっき僕たちも失礼なことを言っちゃったから、これでおあいこだね」


 普通に考えて、こんなに若くて可愛い女の子がダンジョン配信をやっているなんておかしいもんな。女性の探索者やダンジョン配信者の数は圧倒的に少ない。


 ダンジョンに入るということは命の危険が伴う。普通の親なら娘がダンジョンに入るなんて言いだしたら、全力で止めるはずだ。どうやらこの2人もいろいろと訳ありのようだ。


「……ああ、おあいこだな。それじゃあ、ゲートまで送ろう」




「そうだ、こいつは返しておこう」


 ゲートまで2人と歩いて送る途中、華奈のマジックポーチを彼女に返した。


「えっ、でもこれはヒゲダルマさんに助けてもらったお礼です」


「いや、例のベヒーモスを倒せたから、それで十分だ。これはもらいすぎたから返すよ」


「そんな……さっきのハイポーションの分だって全然足りてないのに……」


「いいから、気にするな。ぶっちゃけ、モンスターの素材やアイテムとかは一通りそろっているから必要ないんだよ」


 これも本音だが、さっきはちょっと失言してしまったし、その分もある。2人はいろいろと大変そうだし、俺にはベヒーモスの肉と素材があれば十分だ。


「……ヒゲダルマさん」


「んっ、なんだ?」


「えいっ!」


「ちょっ、瑠奈!?」


「………………」


 なぜかなんの脈絡もなく、突然瑠奈が抱き着いてきた。


 防具越しにだが、女の子特有のいろいろと柔らかな感触が伝わってきて、なんだか良い匂いもする。


”ちょっ、瑠奈ちゃん何してるの! @†通りすがりのキャンパー†”

”ヒゲダルマ、ちょっと俺と代われ! @月面騎士”

”リア充爆発しろ!”

”きゃー! @WAKABA”


 コメントの方も騒がしい。というかいきなりなにをするんだ、この子は……


「どうかな、これでちょっとはお礼になった?」


「……ああ、逆にこっちがもらいすぎなくらいだ」


「本当! やったー!」


 天真爛漫という表現がとても良く似合う笑顔の美少女からのハグ。完全に世捨て人となっていた俺でも、ちょっと来るものがあったぞ。


 というか、この子の無防備さは将来が少し心配になる……


「まったく、瑠奈ったら」


「そういうわけでお礼は十分にもらったから、遠慮なくもらってくれ」


「……はい、それではありがたく」


 結果として、向こうも遠慮なく受け取ってくれるようになった。まさか、計算してたりはしないよな……?


「それじゃあ2人とも、気を付けてな」


「この度は本当にありがとうございました。あの、ヒゲダルマさんの連絡先を聞いてもよろしいですか?」


「んっ、別にいいぞ。だけどスマホなんかは持っていないから、登録した配信チャンネルの連絡先しかないけれどな」


「はい、ありがとうございます!」


 まあ、社交辞令というやつだろう。多分この子たちともう関わることはない気がするな。

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