第78話 デュラハンとの戦闘
「……よし、ここだ!」
フェイントを含めた動きを含めて左右に激しく動き、デュラハンを翻弄する。さすがに力はともかくスピードは50階層よりも遥かに深い階層を攻略してモンスターを倒して経験値を積んだ俺についてこれないようだ。
そして左腕で抱えたデュラハンの頭とデュラハンの身体の半身がちょうど重なり合ったところで宙に跳躍した。デュラハンはすぐに頭を身体からずらして視界を得ようとするが、すでに俺は跳躍しているので、相手からしたら一瞬だけ俺が消えたように見えるはずだ。
「………………」
やはりこちらの動きを見失っている。そしてこちらの狙いはデュラハンの元々首があった場所だ。このデュラハンの首の部分は鎧がなく、黒いモヤのようなものが噴き出ている。
「おらああああ!」
白牙一文字を下に向け、首にある黒いモヤを目掛けて思いっきり突き刺した。
「……ッ!?」
黒いモヤの中に大剣がめり込み、初めてデュラハンに大きな反応があった。デュラハンが思いっきり身体を振ったおかげで身体から振り落とされたので、うまく地面に着地する。
「だいぶダメージがあったっぽいな。だけど身体の中に大剣を串刺しにしたんだから一撃で倒せてもいいだろうが……」
先ほどまでと比べて身体が小刻みに揺れており、明らかにダメージがあったと思うが、デュラハンはまだ動いてくる。さすがに身体の中心に大剣を突き刺したんだから一撃で倒せてくれてもいいと思うんだがな……
大剣突き刺した時の感触も肉を斬ったという感触ではなく、もっと柔らかい粘土に大剣を突き刺したような感触だった。
「とりあえず狙いどころはデュラハンの首元のところと、大事そうに左腕で抱えているデュラハンの頭だな。よし、どんどん削っていくぞ!」
「………………」
ガシャアンッ
「……ようやく終わったか?」
首元に3度ほど攻撃を与えたところで、ようやく鎧を着たデュラハンの身体が地面へと崩れ落ちた。だがまだ油断はしない。今までのボスモンスターがしたことはないが、死んだふりをしている可能性もある。
「ふう~やっと一体目か」
少しするとボスモンスターを倒した報酬の宝箱と51階層へ進むゲートが出現した。宝箱が出ればボスモンスターを討伐したという明らかな合図になる。早速警戒をしながら宝箱を開ける。
さすがにボスモンスターの報酬の宝箱がミミックだったという報告は一度も上がっていないが、念には念を入れておかないといけない。それに普通の階層で宝箱を開ける時の油断にもつながるからな。
「中身は魔石か。さすがに50階層の報酬だけあってそこそこ大きいな」
宝箱から出てきたのは10センチメートルほどの魔石だった。魔石はこれくらいの大きさでもかなり大きめのサイズとなる。魔石は加工して武器に取り付けると属性を付与することができるし、大きなエネルギー資源にもなる。
魔石から多くのエネルギーを抽出できる方法が発見されてから、一気にダンジョンへの関心が高まったんだよな。このドローンの動力も小さな魔石を媒介にしているらしい。
「剥ぎ取る部位もなさそうだし、デュラハンの鎧やロングソードも消失して使うことができないようだ」
すでに倒したデュラハンの鎧やロングソードが消失していく。このあと身体もゆっくりと消失していくのだろう。
だいたいのボスモンスターは食用に適していないが、特にこのデュラハンなんて食べる部位はまったくなさそうだ。あの黒いモヤなんて食べたら、腹を壊すことは間違いないだろう。
腕輪を操作して一般配信のコメントを見てみると、こんな時間なのにものすごい量のコメントが書き込まれている。50階層のボスモンスターのライブでの配信なんてそうはないだろうからそれも当然か。さすがにこのコメントの書き込み速度は俺の反射神経と思考速度でも追えなくなりそうだ。
"うお~なんじゃ今の戦闘! 動きがまったく見えなかった!"
"ヒゲダルマが速すぎてスロー再生しないとまったく追えないぞ!"
"てか、相手のデュラハンもヤバすぎん!? あんな一撃をまともに受けたら、普通のやつなら武器ごと真っ二つだろ常考!"
"報酬の魔石も超デケえええ! 一体いくらで売れるんだよ!"
"こいつを周回するって頭おかしいだろ! 絶対にいつか死ぬぞ!"
ものすごい書き込み量だな。だけどその辺りのコメントはどうでもいい。今はこのボスモンスターについての情報がほしい。
「今のボスモンスターとの戦闘はどうだった? こいつを周回するつもりだが、弱点や狙えそうな動きがあったら教えてほしい」
俺がドローンに向かって話すと、またもや一気に大量のコメントが書き込まれた。
"いやいやいや! まともに動きを追えてないのにそんなの分かるか!"
"とりあえず最後にデュラハンを倒したみたいに首元の黒いモヤにはダメージが通るように見えたけど……"
"首元はいけそうだ。でもそこまでにあの巨体のデュラハンの攻撃をかいくぐるとか、それどんな無理ゲー!?"
"やっぱ大事そうに抱えているあの頭なら一撃でいけんじゃねえ?"
"ちょっと待って、超スロー再生で見返してみる!"
高速で流れているコメントを読んだが、今のところはそこまで役に立ちそうな情報はなさそうだな。
よし、次はいつものリスナーさんのグループを見てみよう。




