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第67話 横浜ダンジョン


「今は金なんて気にしている暇はないからな」


 マジックポーチのひとつを押し付けるようにして月面騎士さんへ渡す。先日配信に出たことと、透明腕輪を渡したことにより大金をもらっていて助かった。まさかこんな形でお金が必要になるとは思ってもいなかったな。


「すまない……ヒゲダルマ、本当に感謝する!」


「礼なら母親を助けられた時に改めてちゃんと聞くからな」


「ああ!」


 俺が出した右拳に月面騎士さんがコツンと右拳を当てた。


 さあ、ここからは時間との勝負だ! 必ず最速で天使の涙を手に入れてみせる!






「……ここが横浜ダンジョンか」


「元々人口が多いので、この時間なのに大宮ダンジョンよりもにぎわっていますね」


「それにダンジョンの攻略もあっちよりも進んでいるみたいだもんね!」


 月面騎士さんと別れたあと、一度大宮ダンジョンの家へ戻って必要な物をマジックポーチに入れて用を済ませてから華奈と瑠奈と合流した。そして2人と一緒に横浜ダンジョンへと移動してきた。


 大宮駅からは電車一本で横浜駅まで移動できて、そこからはタクシーで横浜ダンジョンの入り口のあるビルまで来られたので、さすがに俺ひとりでも来られたと思うぞ。……まあ、大宮駅でどの路線に乗るのかは2人に任せたけれどな。


『ダンジョン探索者カードをお願いします』


「はい」


『どうぞお通りください』


 無機質な機械の音声に従って、身分証であるダンジョン探索者カードを機械へと通す。そのままゲートへと進んでいき、警備員のチェックを受けてから、いよいよ横浜ダンジョンの中へと入った。




「ここが横浜ダンジョンか。やはり最初は草原の階層になるんだな」


「他の階層は異なりますが、どのダンジョンも1階層目は草原の階層になっているみたいですね」


「でも大宮ダンジョンよりも人が多いね」


 俺は大宮ダンジョン以外のダンジョンに入るのは初めてだが、華奈と瑠奈は他のダンジョンにもいくつか配信の仕事で行ったことがあるらしい。


 ダンジョン探索者の資格を取れば、国内のどのダンジョンにも入ることが可能となる。


「それじゃあドローンを用意してと……どうだ、これで見えているか?」


"ああ、問題なく見えているぞ。 @たんたんタヌキの金"

"ヒゲダルマの肩に固定されているから若干揺れているけれど、ちゃんと見えているな。 @ルートビア"


 今俺の肩には肩パッドのような物の上に丸いドローンが固定されている。これは配信用ドローンを肩に固定して配信ができるというダンジョン配信用の道具となる。先ほど家に戻って必要な物を持ってきたあと、同じ大宮ダンジョンのビルにある夜桜屋へ行って購入してきたものだ。


 ……いやまあ、支払う時間すらも勿体なかったから、ツケで買ってきた物なんだけれどな。当然夜遅くで夜桜屋の店は閉まっていたから、シャッターを叩いて夜桜を呼んだらめちゃくちゃ怒られた。


 確かに悪いとは思ったが、こちらも緊急事態なので、今度店へ行った時にちゃんと謝るとしよう。


 このドローン固定用の肩パッドがあれば、ダンジョン内で身体能力の上がった俺のスピードで走っても、ドローンを置き去りにすることがない。その代わり、ドローンは俺の身体に固定されてかなり揺れてしまうから、普通の配信をする時にはあんまり向かないようだ。


"ヒゲダルマ、病院の医師の人には伝えておいた。本当にありがとう! @月面騎士"


「了解だ。何か進展があったらすぐに連絡するから、月面騎士さんは一度少し休んでくれ」


"ああ。病院のすぐ近くに宿を取ったから少し休ませてもらう。ヒゲダルマも無理だけはしないでくれよ。 @月面騎士"


「安心してくれ。俺にはこのマジックアイテムがある!」


 テレレテッテレ~という脳内効果音と共にマジックポーチから、とあるマジックアイテムを取り出す。


「これは『ハツラツ薬』だ。たぶんみんなも知っているかもしれないが、単純に眠らなくても活動できるというマジックアイテムだな」


 小さな小瓶に入った栄養ドリンクのような形をしているが、これも立派なマジックアイテムだ。


 ダンジョンから入手できるマジックアイテムは天使の涙みたいに立派な容器に入ったマジックアイテムもあれば、こんなふざけた容器をしたマジックアイテムなんかもある。


"確か効果時間が12時間で、その効果時間中は眠気がなくなるマジックアイテムだったっけか? @ケチャラー"

"ああ、狂戦士の腕輪とまではいかないけれど、少しだけ副作用があったはずだ。効果が切れた時に倍の眠気が襲ってくるんだったかな。 @たんたんタヌキの金"

"さすがにあの腕輪レベルの副作用はそうそうないだろw その副作用の分、あの腕輪は強力過ぎたからな…… @XYZ"


「ああ。副作用も大したことはないし、連続での使用が問題ないことも確認できている。20個以上持ってきたから、天使の涙を手に入れるまではずっと起きているつもりだ」


"……まあ、ヒゲダルマなら大丈夫だとは思うが、あんまり無茶はするなよ。 @†通りすがりのキャンパー†"

"精神的な疲労まではとれないみたいだから、無茶は駄目だよ~ @WAKABA"

"俺が言えたことじゃないけれど、本当に気を付けてくれ! @月面騎士"


「ああ、任せてくれ!」


 俺だって自分の命は大事だ。だけど、俺も命を落とさない限りで多少の無茶はしてやるさ。


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