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第31話 救われた命


「……キャンパーさん、すまないけれどその六本木モールの情報を集めてくれないか。その店の店内図なんかもあればとても助かる」


"了解だ、少し待て。調べた情報はいつも通りヒゲダルマの連絡先に送っておくぞ。 @†通りすがりのキャンパー†"


「いつも本当にありがとう。できればこれまでの借りを含めて全部返したいところなんだけれどなあ……」


 前回の会見の時もそうだが、キャンパーさんやリスナーさんたちにはお世話になりっぱなしだ。それこそこの配信を始めてから、俺はみんなのアドバイスによって何度も命を救われてきた。


「ちょっ、ちょっと、ヒゲさん! もしかして六本木モールに行くつもり!?」


「無茶です! 私たちはダンジョンの中では超人的な力を得ることができますが、ダンジョンの外では普通の人と同じなんですよ!」


"ダンジョン内では無敵でも、ダンジョンの外だとヒゲダルマじゃ無理だろ! 大人しく警察や自衛隊に任せておけって! @ルートビア"

"さすがにここは専門家に任せておいた方がいいんじゃないか…… @月面騎士"


「………………」


 瑠奈や華奈、それにリスナーさんたちの言うこともよく分かる。みんなの言う通り、このダンジョンの中でこれまで多くのモンスターを倒すことによって得た俺の超人的な力はダンジョンの外では一切なくなってしまう。


 だが、タヌ金さんは俺に助けを求めてきた。


 これまでに何度も何度もタヌ金さんやみんなのアドバイスによって命を救われてきた。俺は自分の命がなによりも大切だが、その命はリスナーさんに救ってもらった命だ。


 だからこそ、たとえそこにどれだけの危険があろうとも、俺は俺の命をかけてその恩を返す!


「俺はタヌ金さんを助けに行く。2人とも、悪いが今日の配信はここまでだ」


 急いでダンジョンのゲートから外へ出て、六本木モールへ向かわなければならない。


「……分かりました。ヒゲダルマさんには譲れないものがあるんですね」


「分かったよ、ヒゲさん。でも、僕たちも一緒に行くからね!」


「ヒゲダルマさん、私たちも一緒に行きます。私たちもリスナーの皆さんにはたくさん助けてもらいましたから!」


 華奈と瑠奈が2人で目配りしながらそんなことを言う。だが――


「いや、2人は来なくていい。はっきり言って、俺ひとりの方が動きやすいからな」


「ヒゲさん……」


「ヒゲダルマさん……」


 俺は2人を連れて行く気はこれっぽっちもない。これは俺とリスナーさんたちの問題だ。2人を巻き込むわけにはいかない。


"格好つけているところを悪いが、ヒゲダルマひとりで六本木モールへ辿り着けるとでも思っているのか? @†通りすがりのキャンパー†"


「うっ……」


 テーブルに置いてあったデバイスからキャンパーさんのコメントが表示される。


"無理無理無理! 六本木だぞ、前回の会見会場へたどり着けなかったヒゲダルマに辿り着けるわけないじゃん! @ルートビア"

"あの辺りは本当にごちゃごちゃしているからな。絶対にヒゲダルマひとりじゃ迷子になるだろ! @月面騎士"

"絶対に2人と一緒の方がいいよ! 六本木だと電車も乗り換えるんだよ! @WAKABA"

"今回は遅刻したじゃすまされないからな! 少なくとも六本木モールまでは2人を連れていけ。むしろ2人に連れて行ってもらえ! @†通りすがりのキャンパー†"


「………………」


 まさかのリスナーさん全員からの総ダメ出しである……


 俺は子供か! と反論したいところだが、俺には前科がある。そして六本木には行ったことがないが、どうやら俺の想像以上に複雑な場所らしい。


 確かに今回は会見の時とは違い、遅刻したではすまされない。そして迷っている時間もないか……


「……華奈、瑠奈、すまないが俺と一緒に来てくれないか?」


「はい、もちろんです!」


「うん、もちろんだよ!」


"2人ともヒゲダルマさんをお願いね! @WAKABA"

"しかし、こんなに可愛い華菜ちゃんと瑠奈ちゃんの時は頼まれても助けようとしなかったのに、見ず知らずのおっさんのリスナーは危険を冒してでも助けに行くんだな…… @ルートビア"

" まあ、こういうところもヒゲダルマらしいな。 @†通りすがりのキャンパー†"




 急いで2人と一緒にダンジョンを駆け、ゲートへと移動する。


 リスナーさんたちから今のままの格好ではヒゲダルマだとバレると言われたので、移動しながら雑にだがヒゲを剃って伸びた髪を後ろで縛り、以前の会見の時に使ったスーツを着た。


 このスーツは夜桜が用意してくれたスーツで、伸縮性に優れた最新式の動きやすいスーツらしい。


 華奈と瑠奈もかなりの有名人なので、俺と一緒にマスクと帽子をかぶって変装をしている。


 俺たちがゲートへ移動するまでにリスナーさんたちが六本木モールまでの最短の道筋を調べてくれ、キャンパーさんが店の詳しい情報を集めてくれていた。


 そしてタヌ金さんからの連絡は依然として途絶えたままだ。やはりタヌ金さんの身に何かが起こったことは間違いないらしい。


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