第24話 属性付きの武器
「……なるほど、とても参考になりました」
「すっごく勉強になったよ!」
そのあともいくつかの質問に答えていった。事前に俺個人のことは話さないと伝えてあったので、基本的にはダンジョンのことについての質問ばかりであった。俺の経験上、役に立つことを結構伝えたから、日本ダンジョン協会の方も多少は満足しただろう。
危険なモンスターの情報なんかは定期的に華奈と瑠奈を通して発信してもいいかもしれないな。それ以上のことを日本ダンジョン協会が求めるのならバックレるけどね。
「本当にいろいろとありがとうございました。それではそろそろ時間になりますので、これが最後の質問になります」
ふう~いろいろと答えてきたが、これが最後の質問らしい。この後は実際に俺の戦闘を少しだけ見せて、この配信は終わりの予定だ。
「と、匿名キボンヌさんは現在結婚をしている人や、お付き合いされている女性はいますか?」
「………………」
いや、なんだよその質問は? さっきまではダンジョンにかかわりのある質問だったのに、いきなり俺のプライベートな話になったぞ。
「どうなの、匿名キボンヌさん!」
「どうなんですか!」
「………………」
しかも2人ともこの質問に限って、瑠奈も華奈もとても食い気味だし。なんならさっきのダンジョンの質問についてよりも興味がありそうなんだが……
「いや、未婚だし、今付き合っている女性はいない」
そもそも自暴自棄になって、ダンジョンに潜る原因のひとつが女性関連だ。少なくともそのあとは女性なんて意識することはなかった。華奈と瑠奈が女性として綺麗なのは分かるが、俺が女性として意識していないのはそういう理由もある。
「本当ですね!」
「あ、ああ」
なぜか華奈の圧がものすごい。
「じゃあじゃあ、匿名キボンヌさんの年はいくつなの!」
最後の質問じゃなかったんだっけ……?
「25くらいだと言っておく」
実際の年齢も25歳なのだが、年齢を断定すると身バレにつながりそうだから、若干ぼかしておく。
「25かあ……うん!」
なぜかひとりで頷く瑠奈。何がうんなのだろう。
「それでは匿名キボンヌさんのタイプの女性はどんな人ですか!」
「………………」
いや、もはやダンジョンとか欠片も関係ないし!
「それについてはノーコメントだ。というかそのあたりの質問は事前にあった質問なんだよな?」
「は、はい! じ、事前にリスナーさんからあった質問ですよ!」
まあ、俺がヒゲを剃った姿の女性ウケは良かったから、そういうことが気になるリスナーさんもいてもおかしくないのか。
「そ、それじゃあ質問コーナーはここまでだね! 次は実際にモンスターと戦うところを見せてもらうよ!」
「匿名キボンヌさんの武器と防具は特徴的ですけれど、自分で作っているんですか?」
セーフゾーンを出て、配信を続けつつ華奈と瑠奈とモンスターを探して歩いている。
「ああ、最初は既製品だったが、階層が進むにつれて物足りなくなってきて、武器と防具を自分で作るようになったんだ」
階層を進むと既存の武器と防具ではもの足りなくなった。武器と防具を扱っている店もあるから、昔行ってみたのだが、当時の階層で得たモンスターの素材を加工できるような店は一見さんお断りの店しかなかったので諦めた。
俺のは武器や防具といっても、金属を加工したりするわけではなく、モンスターの骨や牙を削り出したものや、鱗などを組み合わせて作った簡易なものとなっている。
今日持ってきたものは普段使っている大剣と防具のお古だ。それでもこの階層のモンスターを相手にするには十分な武器と防具となっている。
「うわ~すごく硬いね。カチカチだよ」
「この階層からだいぶ下のモンスターの素材だからな」
俺の防具を触りながら瑠奈がそんなことを言う。
……いろいろと際どい発言だったから、配信のコメント欄はさぞ盛り上がっていることだろう。
「そういえば2人の武器は属性付か?」
「はい、私のロングソードは火の属性が付与されています」
「僕のナイフには風属性が付与されているよ」
ダンジョンの中に入ると、それまでに得てきた経験値によって身体能力が上がっていく。
しかし、どれだけモンスターを倒しても、ゲームのように魔法やスキルというものは使えるようにならなかった。モンスターの中には火を吐いたり、水を操るようなモンスターも現れるが、人が魔法を放つことは今のところ確認されていない。
だが、ダンジョンの中で稀に現れる宝箱から得られるアイテムの中で、さらに希少な確率で得られる魔石というものが存在する。その魔石に特殊な加工を加えてから武器に仕込むと、火や風などの属性を付与できることが研究によって分かったのだ。
もちろん魔石自体が非常に高価なうえに、加工して武器に仕込むから、ただでさえ高価な武器がさらに高くなる。属性付きの武器を持っている時点で、かなり上位の探索者やダンジョン配信者となるらしい。これもリスナーさんから聞いた話だ。
「先に2人の戦闘を見せてくれ。最初に出てきたモンスターは2人に頼む」