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第22話 2人のチャンネル


「皆さん、こんにちは! ダンジョンツインズチャンネルの華奈です!」


「瑠奈です! みんな~今日もよろしくね!」


 2人の配信が始まり、2人の配信用ドローンに2人が挨拶する。どうやら2人の配信はそれぞれのドローンの映像を同時に映しているらしい。例の腕輪を中継して、現在配信中の映像とリスナーさんからのコメントをテーブルに置いたデバイスによって宙に表示している。


 まだ配信が始まったばかりというのに、ものすごい数のコメントが流れていく。人気のあるダンジョン配信者のコメントはこんなにすごいのか……ひとつひとつを目で追うことなんて不可能だ。


 それにしても、2人はあんな感じでポーズをしながら挨拶するのか。なるほど、確かに可愛いくはある。だが、俺があれをしたところで、絶対にリスナーのみんなには不評なんだろうな。


「今日は事前に告知していたように、今話題のこの人に来ていただきました!」


「ジャーン! 僕たちを2度も救ってくれた匿名キボンヌさんで~す!」


「初めまして、匿名キボンヌです」


 2人のカメラが俺の方を映し出す。


 今日の俺はヒゲダルマではないので、偽名を使っている。残念ながら2人はキボンヌという言葉自体を知らなかった。これが世代の差というやつか……


 武器と装備の方はいつも身に着けている防具ではなく、ひとつお古の上に見た目重視の既製品の防具を身に付けている。そして何より、以前会見に乱入したときと同じく、ヒゲと髪を夜桜に整えてもらっているから普段の格好とは全然違う。


「匿名キボンヌさん、まずはイレギュラーモンスターのベヒーモスから助けていただき、本当にありがとうございました!」


「その後も先日の会見で、自分のことを秘密にしておきたいのに僕たちを助けに来てくれて、本当にありがとうございました!」


 2人とはあの会見のあとに会うのは初めてという設定となっている。


「前にも言ったが、あれはちゃんとした契約だ。イレギュラーのベヒーモスの情報を教えてもらうのと、俺の存在を黙ってもらう代わりに、俺は2人を助けると約束した。華奈と瑠奈があの状況でも約束を守ってくれたのに、俺の方は約束を守るのが遅れてしまって本当にすまない。普段はダンジョンにこもっているから、外の情報をあまり見ていなかったんだ」


 その節は本当に悪かったと思っている。だが、遅れた理由については配信で絶対に言うなとみんなから言われている。


 ……電車を乗り間違えて道に迷ったなんて本当のことを言えば、炎上することは間違いないからな。


「とんでもないです! 匿名キボンヌさんは知らん顔をしていればいいのに、それでも助けてくれたことを私は一生忘れません!」


「僕もです! リスナーのみんなも匿名キボンヌさんにありがとうって言ってくれています」


「ああ、それなら良かった。とはいえ、今日はその埋め合わせもあるから出演を受けたが、これ以降は配信に出演する気はないからそのつもりで頼む」


「はい、もちろん分かっています」


「でもちょっと残念だよね。匿名キボンヌさんが配信をすれば、絶対人気者になれるのにね」


「すまないがその気はない」


 ヒゲダルマとして配信していることがバレないように、普段俺は配信をしていないダンジョン探索者ということになっている。


「それでは今回の配信では匿名キボンヌさんに様々な質問をさせていただきます。もちろん答えられないことは答えなくても大丈夫ですからね」


「ああ、分かった」


 ちなみにここは前と同じダンジョンの34階層にあるセーフエリアのひとつだ。そこにテーブルと椅子を配置して配信を行っている。


 まずは事前に用意していた質問に俺が答えるといった形式だ。質問は基本的に日本ダンジョン協会からのものと、2人のチャンネルのリスナーさんからの質問をまとめたものらしい。


 日本ダンジョン協会の会見に出る気はこれっぽっちもなかったが、これなら2人のチャンネルにも人が集まるし、会見で遅刻した償いにもなるからな。俺としても他の人と話すよりも2人と話した方が気は楽だ。


「それじゃあ最初の質問だよ。匿名キボンヌさんはソロでイレギュラーのベヒーモスを倒すくらい強かったけれど、いったい今は何階層目まで進んでいるんですか?」


 たぶんこれがみんなの一番知りたかった情報だろう。


「詳しい踏破階層については秘密だが、50階層を超えているということだけは伝えておく」


「50階層ですか!? ここ大宮ダンジョンの最高到達階層は39階層ですから、その遥か先を進んでいるということですね!」


 そういえば俺の到達階層については2人にも伝えていなかった。華奈のほうは素で驚いているみたいだ。


「すごいなあ! 僕たちは2人でもまだ37階層が最高なのに……でも、どうしてそのことを秘密にしているんですか?」


「あまり有名になってしまうと、逆にダンジョンを探索するための時間が少なくなるからな。それに最高到達階層を競い合って無茶をして、命を危険に晒したくないというのもある」


「なるほど……」


 実際にはダンジョンの外のことがすべて嫌になってひたすらダンジョンに引きこもっていただけだ。


 とはいえ、今言った2つも一概に嘘とは言えない。特に後者の方は今も多少問題になっている。


 ダンジョンの最高階層を踏破した者の名は一生記録が残る。その名誉を競い合って、無茶をしたり他人を妨害しようとする探索者などが存在することも事実だ。人気や名誉やお金などは時として人を変える要因にもなる。


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匿名キボンヌが死語なのか。歳は取りたくないものだ。
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