第181話 モンスターの唐揚げ
「うわあ~どっちの唐揚げもとってもおいしいね! こっちのグリモウサギの方は柔らかいのにとってもジューシーだよ!」
「こちらのルミナバードのお肉は唐揚げなのにさっぱりとしていてヘルシーですね!」
「モンスターの種類にもよるけれど、グリモウサギの方はもも肉、ルミナバードの方はむね肉といった感じで違う部位を使っているからな」
ダンジョンの中のセーフエリア。
今日は久しぶりに瑠奈と華奈と一緒にダンジョンを探索したあと、のんびりとご飯を食べている。
今日のメニューは唐揚げだ。いつものように2人にも手伝ってもらい、2種類の唐揚げを作ってみた。普通の鶏肉の唐揚げは脂が多くジューシーなもも肉が多いけれど、あっさりした食感であるもむねの唐揚げも好きなんだよ。
「やっぱり唐揚げは二度揚げした方がうまい。それと個人的には衣は片栗粉多めの方が好きだな」
「うちでも二度揚げにしてます。片栗粉が多めだと竜田揚げみたいに衣がサクサクするんですよね」
どうやら華奈の家も同じらしい。低温で揚げたあとに一度休ませて余熱でしっかりと中まで火を通し、もう一度高温で短時間揚げることにより外側をカリッと仕上げることができる。
一度で唐揚げを揚げようとすると、外側が焦げてしまったり、中の肉汁が逃げてしまうからな。
片栗粉を使うと衣がサクサクした仕上がりになる。ただその分時間が経つとそのサクサク感が失われるので、冷めた場合は小麦粉が多めの方がおいしい。揚げたてで食べられる場合にはこっちの方がうまいのである。
「やっぱりお肉がとってもおいしいね」
「特にグリモウサギの方は数が少ない上にすばしっこくて、ダンジョンの食材として人気がありますからね」
「そうなのか。確かにこいつが生息している階層にしては素早かった気がするな」
基本的なモンスターは人を見かけたら襲ってくるが、グリモウサギのように人を見たらすぐに逃げ出すようなモンスターが存在する。そういったモンスターは逃げ足に特化していることが多い。
XYZ:
唐揚げはマジでビールが進むんだよなあ! アツアツで肉汁たっぷりの唐揚げを食べたあとにキンキンに冷えたビールを流し込むとたまらないんだよ! あ~あ、仕事なんてさっさと終わらせて一杯やりたいところだぜ。
ルートビア:
材料が材料だもんね。コンビニで売っている唐揚げとは味のレベルが違うんだろうな!
いつもどおりテーブルの上にあるモニターには俺の限定配信を見てくれているリスナーさんがいる。
†通りすがりのキャンパー†:
こうやってのんびりできるのも、無事にタヌ金の友人が助かったからこそだな。
たんたんタヌキの金:
本当に助かったよ。みんなのおかげで無事に退院して今は前の日常に戻ったってさ!
「本当によかったですね」
「うん!」
タヌ金さんの友人であるすずさんの母親は無事に天使の涙が効いて、その後の検査でも異常が見られなかったので無事に退院した。
タヌ金さんからも連絡がきて、すずさんもとても喜んでおり、これまでのように明るい表情を見せてくれたようだ。
おかげで俺もこうしていつものような日常に戻ってきた。なんだかんだでダンジョンの中でのんびりと過ごしてうまい飯を作るのは楽しくある。
ピコンッ
「ん、なんだ?」
珍しく俺のデバイスから通知が鳴る。
相変わらず俺の一般配信の方の登録リスナーの数はすごいことになっていて通知が山のように来るのでオフにしている。それ以外だと華奈や瑠奈、限定配信のリスナーさんからの連絡以外に通知が来る相手は非常に限られる。
「ヒゲさん、大丈夫?」
「なにか緊急の案件でしたら、私たちは席を外しましょうか?」
「……いや、別に大した用件じゃないから大丈夫だ。さて、普通に食べる唐揚げもうまいが、やはり味変もしないとな。レモンみたいなジレムの実の果汁、定番の七味マヨ、さっぱりとしたおろしポン酢、甘ずっぱい甘酢ダレ、どれが好きか食べ比べてみてくれ」
「うわあ~いっぱいあるね! どれもとってもおいしそう!」
「うう……味変しだすと止まらなくなってしまいます。ただでさえ唐揚げはカロリーが……」
用意しておいた様々なソースやタレをテーブルに並べる。
確かに味変をし出すと止まらなくなってしまう気はするな。2人には少し申し訳ないので、今度会う時はさっぱりとしたメニューにするとしよう。
XYZ:
ダンジョン産の果物の果汁で食べてみたいところだ。あとは甘酢ダレの上にタルタルソースでチキン南蛮風もいいぞ!
ケチャラー:
唐揚げといえばケチャップなのになぜないんだよ!
†通りすがりのキャンパー†:
初耳だが、確かにケチャップも合わなくはなさそうだ。今度試してみるかな。
相変わらずリスナーのみんなも元気そうで何よりである。
「……さて、例の件はどうなったか?」
食事を終えて限定配信を終え、帰還ゲートまで2人を送り届けたあとにダンジョン内の自宅まで戻ってきた。
そしてデバイスを操作して、先ほどメールで連絡のあった百武へと電話をかけた。