第176話 マジックアイテムの悪用
「……承知しました。情報につきましては後ほどまとめてお送りさせていただきます。また、その情報を何に使うのかはヒゲダルマ様には聞かないようにしておきますね」
「そうしていただけると助かります」
相変わらずこの人は察しがいいな。この分だと、何かあった時に俺が最終手段としてしようとしていることがわかっているのかもしれない。
「マジックアイテムを原材料にしているのであれば、ダンジョン協会やダンジョン防衛隊の方でも動くこととなるでしょう。マジックアイテムを悪用するような犯罪グループはすべてなくなればよいのですがね」
「……ええ、本当にその通りですね」
電話越しにだが、少しだけ相手の感情が読み取れた気がした。
ダンジョン協会自体はそこまで信用できないが、少なくとも百武がマジックアイテムを悪用するような連中を是としなそうなことが感じられる。
まあ、ダンジョンの外で騙されて裏切られた俺だから、俺との関わりがあるみんな以外をそこまで信じることはできないのだが。
ヒゲダルマ:
そんなわけで、まずはタヌ金さんの知人の治療をしつつ、ダンジョン協会からの連絡を待つ感じになるかな。
百武との話を終え、チャットルームでそのことを報告する。チャットルームはいつものみんなが参加しているものではなく、キャンパーさん、月面騎士さん、WAKABAさんの3人を招待した新しいチャットルームだ。
タヌ金さんや華奈、瑠奈には伏せておきたい内容だからな。
WAKABA:
ダンジョン協会やダンジョン防衛隊の方でその犯罪グループを潰してくれれば助かるんだけれどね~
月面騎士:
しかし本当に世の中にはくだらないやつらがいるんだな。正しく使えばマジックアイテムは病気の治療にも使えたりするのに……
月面騎士さんの言う通り、なんにしてもその者の使い方である。便利な魔石やマジックアイテムを悪用する輩がいるのも事実だ。
WAKABA:
とりあえず了解したよ~。明日タヌ金さんとその人が入院している病院へ行くことになったから、あとで詳細を送っておくね。
ヒゲダルマ:
ありがとう。俺も何かあった時のためにすぐ近くで待機しておくよ。
タヌ金さんとWAKABAさんと相談をして、いよいよ明日すずさんの母親を治療するために病院へ行くこととなった。
WAKABAさんには申し訳ないが、天使の涙を治療薬としてすずさんの両親や医者を納得させるため、タヌ金さんに同行してもらう。俺の方は2人と関わりがあることがバレないように同行はしないが何かあった時のためにその病院の近くまで同行するつもりだ。
マジックポーチにはWAKABAさんに渡す天使の涙以外にポーション系のマジックアイテムを入れておく。グリーンパウダーを使用したDQN配信者を天使の涙で治療できることは確認しているが、念には念を入れてだな。
†通りすがりのキャンパー†:
おそらくそちらの方は問題ないだろう。それにしてもグリーンパウダーか。最近出始めた新しいドラッグで、従来のものよりも効果が高い分、依存性も高いのが特徴らしいな。
月面騎士:
あのDQN配信者に使った時もヤバかったもんなあ……。本当に代償効果のあるマジックアイテムとかはなくしてほしい。
相変わらずキャンパーさんはいろいろと詳しすぎる。
そして月面騎士さんの言う通りである。効果が高いのは認めるが、代償があったら意味はないだろうに。
とはいえ、こういった危険なものを使ってでも一時の幸福感に浸ったり、大会などで成績を残したい者がいることも事実なのだろう。なんとも嫌な世の中だ。
†通りすがりのキャンパー†:
犯罪者グループについてはダンジョン協会もダンジョン防衛隊に任せるが、しばらく時間がかかることは間違いないだろうな。相手方に逃げられないよう慎重に動くだろうし、法的な問題でもいろいろとしなければいけない手続きもある。
やはりそうなってしまうか……。
グリーンパウダーの効果とグリーンドラッグとの関係性を確認しつつ、使用禁止マジックアイテムの手続きなんかも進めなければならない。こればかりは時間がかかりそうだ。
すずさんの母親が再び狙われないよう、念のため犯罪者グループの情報をこちらでも集めておくが、ダンジョン協会とダンジョン防衛隊がさっさと潰してくれることを祈るとしよう。
†通りすがりのキャンパー†:
グリーンパウダーについてなんだが、ダンジョン協会でもまだ把握していないマジックアイテムらしいし、もしかするとその犯罪者グループが虹野に提供した可能性もあるんじゃないか?