第175話 ダンジョン協会の協力
WAKABAさんと別れてダンジョン内の家に戻り、タヌ金さんに確認をして例の薬がグリーンドラッグであることを確認した。
今後のこともあるので、以前も相談にのってもらったキャンパーさんと月面騎士さんとWAKABAさんにだけはタヌ金さんが女性であることを除いた事情を話し、いろいろと相談させてもらった。
そして、久しぶりにある相手へ電話をかけた。
「お久しぶりです、ヒゲダルマさん」
「………………」
相変わらずこちらから電話をかけると一瞬で出てくれた。
以前に夜桜のボディーガードの相談をした時以来か。
「金色の黄昏団様とのコラボ配信はとても楽しませていただきました。さて、本日はどのようなご用件でしょうか?」
……俺の方の動きもしっかりと把握済みというわけだな。相変わらずこの人はどこかしら怪しく思えてしまう。
そう、この人は日本ダンジョン協会の……役職は長くて忘れたけれど、これまで何度か関わりをもった百武である。
「実は百武さんにひとつ相談事がありまして」
「伺いましょう」
俺は百武にグリーンドラッグのことをタヌ金さんとWAKABAさんの事情を伏せつつ話した。
「なるほど、そちらのドラッグにつきましてはダンジョン協会の方でも議題として挙がってきております。マジックアイテムが原材料となっていたわけですか……。サンプルとして提供していただけるのであれば非常に助かります」
「ええ、使い道のないマジックアイテムですし、喜んで提供させていただきます」
「ありがとうございます。すぐに原材料となっているかを確認し、必要性があれば使用禁止マジックアイテムに指定しなければなりませんね」
どうやら百武やダンジョン協会の方でもグリーンドラッグについては把握していたようだな。WAKABAたち医療関係者の中でも問題となってきたと言っていたし、あのマジックアイテムの副作用は酷いものだった。すぐに使用禁止マジックアイテムに登録されることとなるだろう。
しかし逆に言うと、グリーンパウダーはこれまでダンジョン協会の方で把握していなかったマジックアイテムということになる。こいつを確保することができるダンジョン探索者はかなりの強さを持っているということになる。
ダンジョン探索者の多い東京ダンジョンや横浜ダンジョンではなく、大宮ダンジョンのようなそこまで大きくはないダンジョンが出所といったところだろうか。
「ええ。モンスターで試してみたところ、かなりヤバそうな効果だったので、使用せずに正解でしたよ」
本当はモンスターだけでなく、DQN配信者でも試したことは内緒だ。
「そのマジックアイテムと合わせて、先日手に入れた天使の涙というマジックアイテムもひとつ提供しておきます。ご存知かと思いますが、天使の涙は状態異常回復の効果があるので、もしかするとこのマジックアイテムの効果を打ち消すことができるかもしれません」
「て、天使の涙をですか!?」
百武がこれほど驚いた声をあげたのを初めて聞いたかもしれない。まあ、こっちの天使の涙は相当レアなマジックアイテムではあるらしいからな。
実際のところ、天使の涙で治療できることもすでにDQN配信者で試している。ダンジョンで手に入るマジックアイテムをこういったことに使われることは俺にとっては非常に不快だ。すずさんの母親のような被害者を減らすことができるのなら、喜んで提供するとしよう。
グリーンパウダーと天使の涙を組み合わせて使用すれば一瞬だけドーピングとして使用することができるかもしれないが、いくらなんでも危険すぎるからな。昔の俺ならともかく、今の俺にはそう言った使い方をするつもりはない。
「ヒゲダルマ様には本当に感謝しております。今回の謝礼につきましてもしっかりとさせていただきます」
「いえ、今回の謝礼については不要です。その代わりにひとつお願いしたいことがあります。もしもそのグリーンドラッグの元締めらしき犯罪者グループの情報が分かっているのなら、それを教えてくれませんか?」
「………………」
タヌ金さんの恩人であるすずさんの母親についてはおそらく天使の涙で治療することができるから問題はないだろう。だが、今回の件に関しては下手をしたらタヌ金さんの両親が被害に遭っていた可能性もあるし、医療関係の仕事をしているWAKABAさんはすでに影響を受けている。
再びすずさんの母親が狙われる可能性もあるし、予めその犯罪者グループの情報を集めておきたい。