第166話 試作品
「……よし、こんなものか。ようやく試作レベルの武器が出来上がったな」
鉄森さんのお店へ通い始めてから1週間が過ぎた。この1週間は鉄森さんから武器に属性を付与する方法を教わりながら、ダンジョンにある自宅まで戻ってきて自分で試行錯誤をする毎日だった。
その甲斐もあって、とりあえず試作レベルではあるが戦闘で使用できそうな短剣が完成した。
ケチャラー:
いや、十分過ぎるほど早いと思うぞ。鉄森さんからも気長にやれって言われていたのになwww
ルートビア:
ダンジョン内で身体能力が上がっていることもあるから、作業もだいぶ早く進んでいたのもありそう。全然戦闘では使えなそうだったけれど、短剣から風が出た時は感動した!
XYZ:
草がなびくくらいのそよ風だったけれど、あれは驚いたよな。なんか現実でも魔法が使えるみたいで感動する!
「改めて考えてみるとモンスターが火を吐いたり、麻痺させたりするのも完全に魔法みたいなものだからな。思ったよりも面白かったからつい寝る間も惜しんで作業を進めてしまったぞ」
こういった作業を嫌いではないこともあって、この1週間は畑の世話をするくらいでひたすら作業をしていた。集中しだすとつい止まらなくなってしまうんだよ。
夜桜:
最近ではいろんな技術が進んでいくよねえ。ドローンや映像デバイスもどんどん進化しているんだから、ヒゲダルマも取り残されないようにしないと駄目だよ!
今日は珍しく夜桜も参加している。いつもは仕事をしているが、たまにこうやって限定配信のほうも見ているらしい。
例のDQN騒動は収まって変な客は現れなくなり、あれ以降は俺がたまに利用している店として以前よりもお客さんが増えてきたようで何よりである。あの連中もあれ以降は大人しくしているようだし、各方面に迷惑を掛けたが、結果的には多少良い結果になったようだ。
ケチャラー:
露骨な宣伝でワロスw
XYZ:
だがドローンを変えてから映像が見やすくなったし、定期的にぜひ変えてほしい!
「……ドローンは配信の設定を変えたり、操作を覚えるのが面倒なんだよなあ。映像の方は月面騎士さんがやってくれるから本当に助かっているよ。その辺りは月面騎士さんに相談してみるか」
ルートビア:
配信動画やまとめ動画も最初からクオリティは高かったけれど、最近はさらに上がってきたよね。本業も順調なようでなにより。
XYZ:
本業も映像関連だから、この動画編集も多少は勉強になっているに違いない。やはり今の時代そういった職は需要がある。
相変わらず月面騎士さんには一般配信で配信している映像を見やすくまとめてもらっている。最近は一般配信が週一になり、作業自体も慣れてきたこともあって月面騎士さんの負担は多少減ってきたらしい。
その分本業のほうが少し忙しくなっているようだ。とはいえ、俺の方も月面騎士さんの代わりになる人なんていないから、ぜひこのまま映像編集やドローンの設定などを続けてほしい。
う~ん、給料を上げたいんだけれど、例の天使の涙の借りがあるからと月面騎士さんの方が納得してくれないんだよなあ……。そうだ、いつものお礼代わりに先日華奈と瑠奈を連れていった那月さんたちから教えてもらったモンスターの食材を扱う料亭に連れていこう。
あの店なら月面騎士さんもきっと満足してくれるだろう。お客さんの情報は漏らさない高級店らしいし、那月さんたちには本当に良い店を教えてもらった。他にもいろんな店があるとは思うんだが、自分で店を新規開拓する勇気はないからな。
「さて、今日はこれくらいにして、ダンジョンで実際に試すのは明日にするか。俺も集中して作業し続けてきたからさすがに疲れた」
ケチャラー:
ああ、ぶっ通しで作業していたからな。ヒゲダルマなら大丈夫だと思うが、無茶はしない方がいい。お疲れ~!
夜桜:
うん、ちゃんと健康には気を付けるんだよ。お疲れさま!
「ああ。今日も配信を見てくれてありがとうな」
ドローンのスイッチを切って、限定配信を終了した。
俺の場合は81階層にあるセーフエリアから他の階層に行くためのゲートに移動するまでとここに帰ってくるまでが一番危険だからな。ここを出る時には体調が万全な状態で出るようにしている。
さて、今日はぐっすりと休んで明日に備えるとしよう。
ピコンッ
寝る準備をしようとしたところで俺のデバイスに通知が鳴った。一般配信の方は通知しないように設定をしているから、この通知が鳴る時は俺の数少ない知り合いからの連絡となる。
「マジか……?」
デバイスを操作して通知を見ると、そこには初めての人から個別メッセージが届いていた。
たんたんタヌキの金:
ヒゲダルマにお願いしたいことがあるので、ダンジョンの外で会えないでしょうか?
1巻発売前にランキングが徐々に上がってきました!
ブックマークと評価がまだの方は何卒よろしくお願いしますm(_ _)m