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第163話 お礼


「ほう、このモンスターの皮はすごいな! これほど丈夫なのに伸縮性があって、防具にぴったりだ。それにこっちのモンスターの鱗は非常に硬い。こいつもいい防具になるぞ!」


「俺も同じ考えで、上の防具はこのモンスターの鱗を使っているんだ。それとこうやって鱗同士をうまく重ねることでより丈夫にできて稼働域を狭めないようにすることができたな」


「むむっ、なるほど! こいつは実際に使っている者でないと気付きにくいぞ」


「リスナーさんが調べて教えてくれた方法もうまく取り入れているんだ……っと、すまん。つい話し込んでしまった」


 つい鉄森さんと一緒に俺が作った武器や防具と気に入った物があったら代金代わりに渡そうと思っていたモンスターの素材を見ていたら熱中して話し込んでしまっていた。


 華奈と瑠奈はそんな俺と鉄森さんが話しているのを見ていた。


「ううん、大丈夫だよ。ただ、ヒゲさんもそういう顔をするんだって思ってさ」


「ええ。鉄森さんがモンスターの素材に熱中するのは知っておりましたけれど、ヒゲダルマさんもこれほど熱中してしまうのですね」


 なんだか恥ずかしいところを見られてしまったな。


 リスナーさんたちとはこういった話を結構するけれど、リアルでこういった話ができる機会は俺にはあまりなかったから、つい話し込んでしまった。


「ふっふっふ、こればかりは男のロマンだからな。うん、武器や防具の手入れもちゃんと行っているようだな」


「武器や防具の手入れは直接生死にかかわることがあるから、完璧にやらないと駄目だろ」


 モンスターとの戦闘で武器や防具が破損して生死にかかわることだってある。当然武器や防具の手入れは毎日するぞ。


「ああ、その通りだ。そっちの2人もそのことをよくわかっている。最近のちゃらちゃらした配信者なんかは武器や防具の手入れを全部他人任せにしちまうからな。専門的な整備は職人に任せるとしても、日々の整備は自分でやれってんだ。よし、属性付きの武器についてだったか。教えてやるからこっちにこい」


「はい」


 普通に話しこんでいただけだったが、どうやら武器に属性を付与する方法を教えてくれるらしい。俺も素人なりにだが、武器や防具を自分で作っていることもあって、多少は認めてくれたのかもしれない。


「付き合ってくれてありがとうな。2人のおかげで属性付き武器の作り方を教えてもらえそうだ」


「ううん、鉄森さんは自分が認めた人しか武器や防具を作ってくれないからね。認められたのはヒゲさんの力だよ」


「ええ。もし鉄森さんとヒゲダルマさんがよろしければ、このまま私たちも続けて見ていても大丈夫でしょうか?」


 2人も属性付き武器に興味があるのか。結構な時間がかかってしまいそうだが、大丈夫かな?


「ああ、好きにするといい。自分たちの武器がどういう仕組みなのかを知ることは役に立つだろう」


「鉄森さんが大丈夫なら、俺も大丈夫だ。待たせてしまってすまないな」


 2人にはこの店を紹介してもらったし、とても助かった。待っていてもらえるようだし、何かお礼をしたいところだ。




「おっと、もうこんな時間か。続きは明日だな」


「はい」


 武器に属性を付与するための魔石の加工は時間がかかるため、今日中にすべてを教わることは無理だった。だけど明日もここに来ていいということはこのまま引き続き教えてくれるということで良さそうだ。


「ああ~瑠奈と華奈はちょっと入り口で待っていてくれ。俺はこっちのヒゲダルマと少しだけ話がある」


「うん、わかった」


「ヒゲダルマさん、先に行っていますね」


「ああ、了解だ」


 鉄森さんに呼び止められて俺だけ鍛冶場に残った。


 いったいなんの話だろう? 魔石の加工を教わる時は厳しいながらも丁寧に教えてくれていたし、なにか怒られるということではないと思うが。


「……瑠奈と華奈を助けてくれて礼を言う」


 そう言いながら鉄森さんは俺に向かって頭を下げてきた。


「有名配信者の件についてのことか? それについてはすでに華奈と瑠奈からお礼を言われているし、鉄森さんからお礼を言われることではないと思うが」


「あいつらは上客ということもあるが、家のこともあって個人的に応援をしていて、たまにあいつらが配信している映像も見たことはある。あの2人が有名配信者を見捨てて逃げたとニュースになった時はそんなことをする娘たちじゃないと何度も訴えたんだが、相手にしちゃもらえんかった。例の会見の時も見ていて怒鳴り込んでやろうと思っていたが、場所もわからずに歯がゆい思いをしていたところにあんたが来てくれたんだ」


 虹野の会見の時の話か。


 どうやら鉄森さんは2人の家のことを知っているらしい。さすがに若い女の子がダンジョンに潜るという話を聞いて、家のことを聞いていたのかもしれない。


「その後もあんたはあの娘たちを助けてくれた。最近あの2人はよく笑うようになったし、それも全部あんたのおかげだ。確かに俺が言うことではないかもしれんが、それでも礼は言わせてくれ。瑠奈と華奈を助けてくれてありがとう」


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